帰って来たスポ根

疾風!アイアンリーガー

1993年 全53話 サンライズ テレビ東京系放送
OVA「銀光の旗の下に」も存在する。
声の出演:松本保典、置鮎龍太郎、堀川亮、山口勝平、小杉十郎太、他

簡単解説
ロボットにより競われる反則なんでもありのスポーツ「アイアンリーグ」で、万年最下位の弱小チーム「シルバーキャッスル」にスゴ腕のアイアンリーガー「マグナムエース」が現われた。彼の活躍により一致団結したシルバーキャッスルだが、これを快く思わないダーク財団は次々と刺客を送り込む。


サンライズ=ガンダムという関係はかなり一般的に認知されている構図である。「機動戦士ガンダム」の大ヒットを皮切りに、「バンダイ」という巨大玩具メーカーを資本につけたサンライズ(逆という見方もあるが)は、数多くのロボットアニメを輩出している。その一方でサンライズはそういった印象を変えようとロボットアニメ以外にも力を入れており、そういった作品は「白い牙ホワイトファング物語」「ママは小学4年生」「鎧伝サムライトルーパー」「新世紀GPXサイバーフォーミュラー」「ガンバリスト俊」等が挙げられる。しかし、一般のアニメファンのサンライズに対する印象はやはり「ガンダムのサンライズ」というものであった。

しかし、そういった「脱ガンダム」を目指した作品の中で、一際輝く作品があった。それが本作「疾風!アイアンリーガー」である!!夕食時に家族全員の箸を止め味噌汁を冷まし、オタク大学生に毎週S−VHS録画を強要し、本編終了時に結成されたファンクラブには女性ファンが殺到した。一部ではあるが熱狂的な支持を獲得したこの「アイアンリーガー」の魅力は、やはり「熱血&友情」というとてつもなく熱いドラマである。

まだロボットアニメが「○○○ビィィィィィム!!」と叫んでいた頃世間を賑わせた「スポ根ドラマ」は、故・梶原一騎氏等の劇画作家の原作を持つ「巨人の星」や「あしたのジョー」、当時の少年少女が中学、高校の部活動選択の際に大きな影響を受けた「エースをねらえ」「アタックbP」「ドカベン」等数多くの名作を生んだ。しかし松本零士氏の「宇宙戦艦ヤマト」や前記した「機動戦士ガンダム」の登場によりファンの注目は複雑なSF設定を持つ大人びた作品に移ってしまう。

そういった言わば「リアル志向」の作品の台頭や「お受験」等のエリート主義により人間界ではリアリティを失ってしまった「熱血&友情」を「ロボット」という媒体を用い復活させたのがこの「アイアンリーガー」なのである。ちなみに本作と同時期に放映され、やはり賛否両論の激しい論争が繰り広げられた怪作「機動武闘伝Gガンダム」もまた主人公達が戦いの中で友情を深め、ラストで公然と絶叫告白をするという凄まじく熱い作品であった。この2作品は80年代の「リアル志向作品」に蔓延した「状況を自分達で切り開かない状況に流されっぱなしの主人公」に対する強烈なアンチテーゼと言えるのではないだろうか?これはある意味で「アニメはアニメらしく戻るべき」という原点回帰なのかも知れない。

そして本作も上記したスポ根作品のように、主人公達はただひたすら正々堂々真っ向勝負を挑む。本作で監督を務めた「アミノテツロー氏」が以降に監督を務めた「マクロス7」では、主人公熱気バサラが武器を使わずに「歌」を聞かせる為に敵と対峙し、ミニ4駆アニメ「爆走兄弟レッツ&ゴー」でも主人公星羽兄弟達は他の車を破壊する「バトルレース」を認めずに正々堂々と速さを競った。この正々堂々さは本作でも強烈に描かれている。

血肉を持たない上に、3頭身で決してリアルではないロボット達が武器も持たずに己の体と根性で全力を尽し、苦悶の表情を浮かべ、絶叫し、涙する…。

「こちらは法悦境!!この大打者と全身全霊を賭けて投打の応酬。俺の青春はこの一時に凝固している!!」

等と目に炎を輝かせんばかりに熱いガチンコ勝負を展開するのである。そんな中、ライバルチームから移籍した「マッハウィンディ」は体内に埋め込まれた服従回路を苦痛に顔を歪めて取り出し、不器用ながらも常に全力で戦うキアイリュウケン達アイアンリーガー達…彼等に熱いドラマを見せつけられる度、我々視聴者はこの作品がロボットアニメの皮を被ったスポ根ドラマであることを思い知るのだ。

そしてこの作品は数多くのヤマ場を持つ怒涛の展開を見せる作品でもある。前半部はシルバーキャッスルに仲間が集まって来る話が続く。ここで特筆したいのは「キアイリュウケン」等元々からシルバーキャッスルに所属していたリーガーが新規メンバーに対し劣等感を抱き、それを克服するというエピソードをも盛り込んでいる点である。

こういった視聴者に対する細かな気配り、物語展開の丁寧さによってロボットであるアイアンリーガー達にも容易に感情移入することが可能となったのだ。そしてメンバーが揃うと敵である「ダーク財団」が次々と襲いかかる「はぐれリーガー編」に繋がっていくのだ。この後半ではマグナムエースがかつて悪辣な「ダークキングス」で1人正々堂々と戦うエース「シルバーフロンティア」であり、彼を疎んじたオーナーにより兵士(アイアンソルジャー)に改造され、人間が資源を奪い合う宇宙戦争に参加させられていたという壮絶な過去が明かされる。

また意思を持たず、ただ命じられたままに破壊を繰り返すリーガー「シャーキィドーグ」が登場する等見せ場が満載。その勢いを最後まで継続して怒涛の如くクライマックスへと盛りあがっていくのだ。

確かにご都合主義な展開は多い。3頭身のロボットがスポ根を演じることに違和感を感じる人もいるだろう。しかしこの「アイアンリーガー」、非常に熱く、それでいて爽快。彼等アイアンリーガー達の熱いドラマは思わず歳を忘れて手に汗握ってしまうのだ。子供が見ている横のお父さんが思わず真剣になってしまうのも無理はない。それだけ優れた作品であるのだ。


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