ナチュラル・ボーン・エンターティナー

ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日

1992年 光プロ、フェニックスエンターティメント
全7話OVA(番外編としてヒロイン銀鈴を主役にした「鉄腕GinRei」「蒼い瞳の銀鈴」等がある)
声の出演 山口勝平、島本須美、飯塚昭三、若本規夫、秋元洋介、他

簡単解説
完全無公害、何度でも再利用可能の夢のエネルギー「シズマ・ドライブ」によってかってない繁栄を迎えた人類。そんな中、激しくぶつかり合う光と影があった。世界征服を策謀する秘密結社「BF団」と、それに対抗するため組織されたエキスパート集団「国際警察機構」その闘いの中に、最強のロボ「ジャイアントロボ」を操る一人の少年の姿があった。名を草間大作!!

番外編「銀鈴」シリーズ
素足のGinRei Episode1 盗まれた戦闘チャイナを捜せ大作戦!!

簡単解説

銀鈴がシャワーを浴びている最中、彼女の戦闘チャイナが盗まれてしまう。その頃、銀鈴の破壊工作に業を煮やしたアルベルトは彼女の拉致を命じる。果たして戦闘チャイナの行方は?そして囚われた銀鈴の前に現れたBF団エージェントとは?

鉄腕GinRei Episode23 禁断の果実を奪取せよ極楽大作戦!!

簡単解説

ロボを封印され落ち込む大作。そして彼を甘い言葉で誘惑するBF団の幻夜…。大作を捜す国際警察機構のエージェント達の前に現れたのはもう一つのGRだった。

GinRei with blue eyes 青い瞳の銀鈴

簡単解説
果てしなく続く熱砂の辺境でBF団同士の死闘…一人の男が銃弾に倒れた。その10年後、熱砂の嵐の先に遺跡を見つけた少年がいた。調査に赴いた国際警察機構のエージェント、銀鈴と鉄牛が砂嵐の向こうに見たものとは?


「カツ丼が光を放つ」
「口からビームを吐く」
「巨大まな板でサーフィンをして、その上で魚を捌く」
「巨大化して大阪城を破壊する」
「タコやエビが歌を歌いながら踊り狂う」…。
これらは「う〜ま〜い〜ぞぉぉぉぉぉぉ〜!!」(大波ザッバァァァァン!!)で有名な伝説的料理(?)アニメ「ミスター味っ子」に用いられた演出の、ほんの一部である。

過剰であり、下手をすればクドいほどの派手で荒滑無稽な演出であるが、決してイヤミでは無く、むしろ「ここまでやるか!?」という密かな感動まで覚え、ついつい手に汗握ってしまう迫力がある。このナチュラル・ボーン・エンターティナー「今川泰宏」ワールドは、今回紹介する「Gロボ」にも如何無く発揮されている。そう、今回紹介する「ジャイアントロボ」は、「味っ子」と同じ監督によって制作指揮されているのである。

かつての「ミスター味っ子」もそうであった様に、この「Gロボ」でも今川監督は横山光輝の原作の世界観をすべてぶち壊し、OVAの持てる枠をすべて使って新たな世界観を構築している。しかし原作を無視し、独自の視点、独自のテーマで作品を構築していく手法は原作に深いこだわりを持っているファンには当然不評を買ってしまう。そう、同じく今西氏が監督した「Gガンダム」がそうであった様に。OVA版を否定する原作ファンの中には「横山原作を忠実に映像化した特撮版『GR』の方が優れている」的な事を発言する人もいるのだが、実の所、特撮版も別に原作に忠実なわけではないので、実はコレは原作を読んだ事がある訳ではない特撮版支持者がOVA版を貶めたいが為についた虚言…いや、妄言であろう。そもそも、作品にはどちらが優れている、なんて基準はあり得ない。あるのは面白いか否か…即ち支持するか否かだけだろう。

しかし、そういった「こだわり」を打破するのが今川流演出である。派手で、過剰で、熱くそれでいて自らが構築したテーマを決してないがしろにしない丁寧な作り…。これこそがナチュラル・ボーン・エンターティナーの真骨頂なのである。本作もご他聞に漏れず、原作クラッシャー…横山光輝キャラ全員集合の様相を呈する作品になっているが、たった7話にも関わらずリリースは6年間という長期スパンでリリースされた為、「完結しないんじゃ…」という噂まで囁かれていた。更にスタッフ、キャストも現在ではもう無理と思える程の超豪華布陣で、劇中の音楽はポーランド国立ワルシャワ・フィルハーモニック・オーケストラに演奏させる等、かなりバブリィな作品とも言える。この「Gロボ」の監督を務めた今川氏はOVA「真!!ゲッターロボ」の3話までを監督したが、それ以降は降板していてスタッフロールの中にも名前が確認出来ないのだが、コレに対し「たった三話で予算を使い過ぎた為に降板させられた」なる噂が立っていたが、成程、この「Gロボ」の豪華さを考えると何となく分かる気がする。

これだけの豪華布陣を敷いた上、今川氏の真骨頂とも言える過剰演出が全7話ぶっ通しで続く、というのがやはり本作一番の醍醐味だろう。例を挙げれば楊子と一清の登場シーン「悪漢どもに御仏の慈悲は無用!!」や、中条長官の「そんな自分に腹が立つぅ〜!!」等、思わず拳を固く握ってしまう演出が目白押し!正に興奮させっぱなしなのである。また、今川監督作品として忘れてはならないのが「熱いオヤジ達」である。神行太保戴宗と衝撃のアルベルトの宿命の対決、人間爆弾「中条長官」、そして一際異彩を放つ十傑集の面々…。この作品に疲れたオヤジは存在しない。若者以上に精気に満ち溢れ、ヤケドするほど熱いオヤジ達しかいない正に「熱きオヤジの祭典」なのである。ただ、その一方で数少ない女性キャラクターであり、人気も高い銀鈴が最後悲しい結末を迎えてしまったりした事もあり、海外のファンの中では今川監督が「女性に無慈悲なゲイ」なんて噂が立ってしまったりもしたそうだが。(苦笑)

特に熱いオヤジとして忘れてはならないのがテレビゲーム「スーパーロボット大戦α」において、使徒相手に生身で立ち向かった事で若い世代にも知られる十傑衆のアルベルトだろう。彼は実は劇中でロボット相手に大立ち回り…という事はなかったが、後に「Gガンダム」において東方不敗が繰り出した超級覇王電影弾の様な技を繰り出すなど派手な活躍を見せてくれるし、故・ポール師匠の指パッチンでカマイチタチを起こす素晴らしきヒィッツカラルド等、後世に語り継がれるであろう凄まじいインパクトを持つさながらビックリ人間大集合的なパワフルさはちょっと他の作品では体感出来ないだろう。

正に、「楽しませる」事を主眼に置いた演出…今やったら絶対に”ネタアニメ”的な扱いをスタッフ、視聴者双方から受けてしまうようなアイデアを決して斜に構えず、構えさせず、真っ向勝負で描ききったのは、安易にマニア受けする楽屋オチ的なネタばかり重宝がられる今となっては余計輝かしく見える。故・長浜忠夫氏は「超電磁マシーンボルテスV」で勧善懲悪のロボットアニメに骨太のドラマ性を与えた。富野由悠季氏は「機動戦士ガンダム」において、ロボットアニメのドラマに深いテーマ性を盛り込んだ。しかしアニメーションとは描き方は色々あれど、そこで描かれる物語は現実のものではない。あくまでも「エンターティメント」でしかないのだ。

それを踏まえ、この「ジャイアントロボ」では複雑な設定や難解なテーマで必要以上にアニメを排他的にしてしまう訳でもなく、ステレオタイプの美少女キャラクターを沢山出してオタク受けを狙うという逃避にも走らず、正々堂々と「エンターティメント」としてのアニメーションを貫いたのだ。この潔さはやはり素晴らしいものである。この「ジャイアントロボ」はそういった作り手の「アニメーション」に対する思い、プライドが生んだ素晴らしい「アニメーション」なのだ。この作品は「啓蒙思想」でも「哲学」でも「真理」でもない。ただのアニメーションであり、純粋な「エンターティメント」なのだ。

ただこの「Gロボ」であるが、話題として上るのは”衝撃のアルベルト”を筆頭とする熱いオヤジ達の魅せるハチャメチャで過剰な演出ではあるが、実はこの作品、スジ自体は物凄く暗く、ヘビーなのだ。特に作中で時に主人公である大作少年&ジャイアントロボを霞ませてしまう敵側、幻夜と銀鈴…完全無欠の第三のエネルギー”シズマドライブ”と”バシュタールの惨劇”によって敵味方に分かれた兄妹の構図は最後に明かされるフォーグラー博士が残した三本のシズマ管の意味や、それを巡る幻夜と銀鈴の悲劇という構図は何とも後味が悪く、やるせない。そう、実は見た目の豪華さだけに囚われない深いテーマ性というのがちゃんと作品に根ざしているのだ。

作中でも描かれているが、主人公の大作少年と敵役の幻夜はかなり似た部分を持っている。亡き父への郷愁と、父の願いを果たそうと戦う姿…方法、目的、結果全て正反対になってしまった2人だが、戴宗の言葉を借りれば、何の覚悟も無いままジャイアントロボという巨大な力を背負わされた大作少年もまた、一歩間違えれば幻夜の様になっていてもおかしくなかったのだ。そして彼をそうさせなかったのが大作少年を受け入れた大人達…銀鈴であり、戴宗であり、楊志であり、そして鉄牛なのだ。

そしてヒロイン的であり、かなり重要な役回りを与えられた銀鈴の方も、実は兄である幻夜との対比とは別に大作少年との対比…というより共通の”信じたい父”という心情がある。この部分は大作少年と村雨の会話や、梁山泊を丸ごとテレポートという決死の大技を繰り出す直前の、銀鈴の大作少年へのメッセージに見られる。父を信じてロボを駆る大作少年を見て、やはり自らも父を信じたいと願う、信じている銀鈴に対し、誤解ではあるが父への想いから暴走し、復讐の鬼と化した幻夜。3本のアンチシズマドイブを””バシュタールの惨劇を再び起こし地球を闇に包む為の、言わば怨念”と捉えた幻夜に対し、別の可能性…つまりは父がそんな事をする筈が無いと信じていた…この部分はラスト…大作少年がロボと共に父から託された問いかけ「幸せは犠牲なくしては得られないのか、時代は不幸なくしては超えられないのか」への大作少年なりの、稚拙ながらも懸命な回答と共に、物語を引っ張り、クライマックスを盛り上げてくれる。この辺は言葉にするのはヤボだろう。是非見て確認して欲しい。

私は個人的に作品を語るにおいて「テーマ性云々」を前面に出すのはキライだ。テーマ性と作品の面白さというものは別に比例するものでもないし、深いテーマ性が与えられていてもクソつまらない作品なんか掃いて捨てる程ある。逆にテーマ性なんか無いけど何だか面白い作品だって幾らでもあるじゃないか。私もこうしてこんなサイト立ち上げて論評まがいの事(私のは「個人的な感想」)をやっている身としては、作品を評するのにバカの一つ覚えみたいに「テーマが深い」的な事を連呼するのはカッコ悪く、頭が悪そうに思えてならないのだ。そんな訳でテーマ性に感銘した場合においても「テーマが深い」という言葉だけでは済ませたくないし、済ませちゃならないとも思っている。

それはともかく、私個人としてはテーマ性とエンターティメント性は決してではないが中々比例しない、というのが持論なのであるが、この「Gロボ」に関してはこの2点がかなり高水準で比例した数少ない例ではないかと思っている。”ネタで終わらない何か”を持っていて、”深さ故の退屈さ”は無い…圧倒的な豪華さ、派手さに負ける事がない味わいを持つ傑作なのだ。

さて、先にも述べたが本作のヒロイン(?)銀鈴はお姉さん系キャラクターとして非常に人気が高く、彼女が主役の短編が3本作られているのでコチラも紹介しておこう。
「素足」は外伝的なコメディで、一応ストーリーはあるのだが、基本的には銀鈴のファンフィルムと考えた方が良いだろう。本編では然程多くなかったサービスカットのオンパレードだ。ただ、サービスカットを逆手に取った、思わず噴出してしまうネタもあったりするが。(笑)ちなみにコチラのオープニングでは「鉄腕」にて活躍した2つのタイプの銀鈴ロボとは別の女性型ロボの姿が見られる。

「鉄腕」は「スーパーロボット大戦α」でも登場した銀鈴ロボを巡る戦いを描いているが、世界観は本編のパラレルワールドと考えた方が良いだろう。国際警察機構北京支部の面々と、アルベルトや幻夜達BF団が居酒屋で隣の部屋に入ってしまう、なんて本編ではありえないネタもあり、本編でクソマジメにやってる連中がバカな事を、しかも真剣にやってしまっているのが非常に面白いファンフィルムに仕上がっている。尚、スペシャルゲストメカデザイナーとしてダイナミックプロの石川賢先生も参加しており、大作少年が正太郎先輩(笑)の格好で乗り込むジンテツのデザインをしている。その他、エンディングがアルベルトとイワンの鼻歌であったりととにかく変なエピソードに仕上がっている。ちなみにこのエピソードを監督したのは「08小隊」の後半の監督を務めた飯田馬之助氏だ。

最後に「青い瞳」であるが、上記2編とは異なりシリアスムードなドラマで、コチラは銀鈴が大作少年と出会う前のエピソードなのでロボの出番は無し。辺境でのBF団の内部事情的なものが描かれる他、本編と同様に保護してくれる存在である大人との死別により成長する少年の姿を描いている。尚、このエピソードには初代金田正太郎役の高橋和枝さんが参加しているもの注目ポイントか。

最後に余談であるが、ココに来ている方なら「ジャイアントロボ」は本作の他に特撮版(1969年)のものがある事をご存知だと思うのだが、アニメ版「Gロボ」が米国でも好評を博した際、「日本には実写版もある」という噂を聞きつけたアメリカの輸入会社が実写版の「Gロボ」を輸入したものの、CG等を多用したアニメよりの作品と思い込んでいた為大コケ、クレームの嵐だったんだとか。「ガンダム」においても最初に公開された「W」やら「G」は人気を博したのにその大元たる「初代」は暗いだの何だのとソッポを向かれた、という事があったのだが、この手の誤解からくるクレームは今後少なくないと思うぞ。




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