キモカッコ良く…無い。

超生命体トランスフォーマー ビーストウォーズリターンズ

2004年(日本公開) メインフレーム社制作 全
声の出演:子安武人、高木渉、山口勝平、柚木涼香、千葉繁、他

簡単解説
ビーストウォーズの終焉で、セイバートロン星に帰還したコンボイ達サイバトロン。しかし、気がつくと謎の機械軍団ビーコンに襲われ、記憶を失い変身もできなくなっていた。地下深くに逃げ込むコンボイ達。そこで最初のトランスフォーマーの創造主オラクルと出会い、フォーマットの書き換え機械と生物の融合体へと生まれ変わる。自分達の失われた記憶から、サイバトロン星に何が起きたかを突き止めるためビーコン軍団を撃退し、議会に辿り着いたコンボイ。しかしそこにいたのはセイバートロン星を支配した宿敵・メガトロンだった。


先日、車を運転中に何気なくテレビを見ている(危険なのでマネしてはいけません)と、ラップ調の何所かで聞いた事のある音楽が流れてきた。そう、初代「ビーストウォーズ」のオープニングテーマ、下町兄弟が歌う「WAR WAR STOP IT」だった。今ではアニメの主題歌に新進気鋭のアーティストの楽曲を当てる、というのが当たり前になっており、別にラップだのヒップホップ…って、このラップとヒップホップの区別からして私には判別出来ないのだが、それはともかく珍しくは無い。しかし、この「ビーストウォーズ」が日本で放映されていたのは今から10年近く前…私が知っていたラッパーなんぞ、「MCハマー」と「イーストなんたらユリ」とかいう連中だけだった。いやはや、思い切った事をしたものだなぁ…とその妙にノリの良い主題歌を聞きながら改めて思った。ただ面白いのはこの「WAR WAR STOP IT」は某エイベックスやら某「種」の様にレコード屋の都合で物語とは全然関係ない様な楽曲を選んでいる、というシロモノではなく、歌詞にも「超生命体トランスフォーマー!!」なんて出てくる位で番組内容に忠実な昔ながらの主題歌だったのだ。確かに、最近でもラップとかを主題歌に持ってきて大失敗…みたいなアニメも少なからずある訳だが、この「ビーストウォーズ」はラップの主題歌がバツグンにハマッている。「ビーストウォーズ」はアメリカ産(制作はカナダの会社だが)で、ラップもアメリカのイメージが強いからシックリいったのかも知れない。

実は私、当時はまだ「トランスフォーマー」を小馬鹿にしていた頃…初代とかは喜んで見ていたクセに、幼少の頃のの自分を忘れて「子供っぽい」と些か否定的に見ていた頃だったので、この「ビーストウォーズ」から続くシリーズは特に注目もしていなかった。たまにヒマな時に見ていた程度だが、その印象も「『ミュータントニンジャタートルズ』みてぇ」という程度のもの…しかし今になって密かに後悔している。あぁ〜、見とけば良かった!!

「ビーストウォーズ」という名を冠する「トランスフォーマー」は劇場版を除けば全部で5つ存在する。「ビーストウォーズ」「ビーストウォーズU」「ビーストウォーズネオ」「ビーストウォーズメタルス」そして、「ビーストウォーズリターンズ」であるが、実は今回紹介する「リターンズ」は「ビーストウォーズ」「メタルス」の2作品の続編でこの3作品は全編3DCGで制作されており、「U」と「ネオ」はこの2つで関連性を持っているが、コチラはセルアニメで日本制作である。色々な所での評判を見る限り、3DCG版の「ビーストウォーズ」よりむしろセル画の日本作品の方が人気が無いようだが、前述している通り私は見ていないのでホントのところは分からない。

さて、「ビーストウォーズ」であるが、今思えば随分と革新的というか、思い切った事をやったシリーズだったと思う。特に当時は他に無かった全編3DCGによる作劇もそうだし、このシリーズの基本フォーマットでもあるトランスフォーマーもそうであろう。旧来のトランスフォーマーは機械生命体であり、車やら飛行機に変形するロボット生物だった訳だが、「ビーストウォーズ」では舞台が太古の地球(後半明言される)なので、彼等は当時生息していた動物をスキャニングした、という事になった。つまり、普通のゴリラやサイが、「変身!!」という掛け声と共にロボットになってしまう、という訳だ。コレ、考えた人は物凄い天才か物凄い大馬鹿のどちらかだ。今までもゴライオン然りダンクーガ然り、動物が人型に変形、というアイデアはあった訳だがそれは飽くまで動物型のロボットが人型ロボットに変身、というものであった事を考えると、生物としての動物から人型ロボットに変身する、というこのアイデアは凄い。

そんな超絶なトランスフォーマー達は玩具においても素晴らしい出来だった。生物からメカロボットへの変形を見事再現するに留まらず、可変トイとしては考えられない程の可動性能を誇っていたし、その奇抜なデザインも相まって割と高い年齢層にも受け容れられていた。今風に言うとグロカッコイイ、といった感じだろうか。しかし、コレが逆に変形機構の複雑化を進め、ちょっとした3Dパズル状態になり大人ですら一度変形させたら元に戻せない、なんて事になってしまったのは皮肉か。

さて、本題の「リターンズ」に入るが、この作品、「メタルス」からの続きであるにも関わらず、日本ではつい数年前に公開されている。何でもこの「リターンズ」…原題「ビーストマシーンズ」は海外でも「ビーストウォーズ」「メタルス」と比べ人気が無い。何でも前2作とはスタッフが代わってストーリーが所謂鬱展開になった為、とか、前2作と比較してかなりグロテスクな方向へシフトしてしまったキャラデザインが原因とか、制作スタッフと玩具メーカーの連携が拙く玩具のイメージが作品と違っていたから、等諸説あるが、その諸説全てが理由なのだろう。確かにキャラデザインのグロ化に関しては「リターンズ」DVDのオーディオコメンタリーにて監督や声優が異口同音に「なんでこんなのになっちゃったの?」とこぼしていたし、物語の内容にしても、オラクル、スパーク、ベクターシグマといった劇中用語が乱立して何が何だか分からないうちにどんどん進んでしまうし、その上画面から映る印象も暗く、陰湿なものだった。コンボイも半ばリーダーシップを失い、チータスに「今のアンタにはついていけない」的な発言をされてしまったりと、トランスフォーマーらしくない悩んでばっかり(「2010」のロディマスコンボイにも自らのリーダーとしての資質に悩む場面はあったが)の印象を受ける。コレじゃあ「メタルス」の後に続けて…という訳にはいかなかったな、というのも判る気がする。

ただ、日本版「リターンズ」で唯一救われたのは、物語の難解さはともかく日本語版独自のアレンジおかげで然程暗いイメージにはならなかった事だろう。そう、日本語「ビーストウォーズ」最大の特徴である「声優の暴走アドリブ」だ。上でもちょっと触れたのだが、「ビーストウォーズ」の日本版は「ミュータントニンジャタートルズ」のアニメと同様ミョーに声優陣の暴走が印象的になっている。「ビーストウォーズ」初期ではそうでもなかったらしいが、「メタルス」の頃になるともうそれが”売り”にまでなっていた。それだけ掛け合い、アドリブネタが面白かったのだ。この感想の一番上で触れた「ビーストウォーズ」の再放送であるが、コレは「ライノックス大暴れ」の回だったのだがそこでスコルポスが「サソリは気持ち悪いからお母さん達に嫌われてるんだ!!」みたいな事を戦闘中に言い出し、最後はやられ際「俺も正義の味方になりたかった…」等と叫んだシーンを見て噴出してしまった。特にこのシリーズのメガトロン役は千葉繁氏で、この手の暴走をさせたら右に出るものはいない人だ。コアなTFファンには「オフザケが過ぎる」と文句を言われた部分ではあるが、逆に「リターンズ」のオーディオコメンタリーで高木氏がラジオ番組で共演した俳優さんに「チータスの方ですよね?」と言われて嬉しかったと語っていたように、確実にこのハチャメチャなアドリブを支持していた子供達もいた訳だ。

で、「リターンズ」の暴走アドリブであるが、「ファンの新規開拓をする気は更々ない」と監督自ら言っている通りハチャメチャさは輪をかけて凄い。ハナから地上波での放送を考えていなかったのか、それとも「大人になった『ビーストウォーズ』ファン」へのアピールなのかシモネタもやたら多く、変形時の掛け声「トランスフォーム!!」すら「住まいのリフォーム!!」等とイジるという前代未聞のネタをもやってのけてしまう。「バリバリバリバリ夜呂死苦」や「お前アホちゃうか〜」といった口グセも健在で、メガトロンに至っては某パチスロの「ボーナス、確定!!」をパロッてしまう始末…もうハナッからアドリブが「戦い」である事を知っている続投メンバーはともかく、新参戦の神奈氏はこのノリに大いに戸惑ってしまったとコメントしている。ただ彼の演じたナイトスクリームも若干マイコーからオカマとキャラが変わっちゃった所はあったが、面白いキャラクターとなっていた。確かにコレなら当時のファンは楽しめるだろう。ただ個人的にはフライのアニメモノマネはクドく感じたが。

そんなこんなでネタとしては面白かったのだが、肝心のストーリーに関しては何が何だか分からない、というのは海外での評価と同様だ。キャラクターのグロさに関しても、ブラックウィドーの目が増えるギミックなどは大丈夫だったが、むしろコンボイやラットルの変なデザインには馴染めなかった。確かに作風自体もキョーレツに人を選ぶものなので、コレをマジメにやってしまったらキツかったろうと思う。ヘタに地上波で流してコレが「トランスフォーマー」のスタンダードだと思われるのはキツかっただろうから、限定的な形で公開、というのは案外正しかったのかもしれない。

…しかし、あの顔(笑)で「私キレイ?」と迫ってくるブラックウィドーは…夢に出てきそうだよな、うん。(笑)


戻る