車田マンガは何時までたっても車田マンガだ

B‘T X

車田正美 作 ホーム社漫画文庫版だと全8巻

簡単解説
ロボット工学の若き天才・高宮鋼太郎教授が機械皇国の手の者に誘拐された。彼の護衛についていた彼の弟・鉄兵は、拉致された兄を追って機械公国へ潜入し、そこでかつて恩師・華連が駆り、最強と呼ばれていたB‘T・エックスと出会う。


さて、車田正美先生のマンガ「B‘T X」である。ちなみにこの作品を全然知らない人はこのタイトルからして読めないと思うので、先ずはその辺の説明から入ろう。
このタイトルは「ビート エックス」と読み、B‘Tとは、機械皇国が作り上げた人間を乗せて戦うロボット兵器…それもコクピットに乗せるのではなく、馬の様に背中に跨がせてパイロットと共に戦うものの総称である。
ちなみに「B‘T」とは、

自らの「BRAIN(頭脳)」で思考し、
人間の「BLOOD(血液)」で作動し、
芸術的とも言える「BRAVERY(華麗さ)」を持った
史上類の無い究極の「BATTLER(戦士)」

この4つの頭文字「B」を「TOTAL」した物、という意味であり、ロボットを超える存在である。
その形状…というかモチーフは多岐に渡るが、基本は幻獣のような存在をモチーフとしている様だ。その性能は凄まじく、背中に生身の人間を乗せているのに深度1万メートルの深海からマグマの中まで活動可能であり、更にはマッハ10で天を駆け、大気圏突破までやってのけるスーパーメカニックなのだ。

そして主人公・鉄兵を助け、共に戦うB‘T Xは機械皇国のエリアの東西南北それぞれを守護する四霊将と呼ばれる存在であり、北のB‘Tマックス、南のB‘Tジュテーム、東のB‘Tライドウ…そして西のB‘Tエックスの4騎がコレに当る。その中でもエックスは五色の麟光を纏う最強のB‘Tとして名を馳せていた。

しかし、鉄兵の流した血が呼び水となり、瓦礫の中から復活したエックスはその強力なパワーの片鱗は覗かせるものの、中々真の実力を発揮しなかった。実はコレがこの「B‘T X」のキモであったりする。
そもそもエックスのドナーは鉄兵ではなく華連である。ドナーとは、B‘Tを起動する際に移植する血液で、その血によりB‘Tは自分のマスターを認めるのだ。鉄兵には華連との出会いの際に負った傷を癒す為、華連から大量に輸血を受けており、それが鉄兵がエックスを再起動出来た理由である。その為、まだまだ未熟なガキで、そもそも真のドナーでもない鉄兵に対し皮肉めいた態度を取る事も少なくなかった。第一、鉄兵の兄を助け出すという目的にも、華連との縁もあり仕方なく付き合っているだけだったのだ。

そんなこんなでこの凸凹即席コンビは、それでもなんとかエリアに向けて少しずつ進んでいくのだが、ココでの各エリアの将との戦いにより、当初はなんともギクシャクしていた鉄兵とエックスの間にゆっくりとではあるが、深い信頼関係が築かれていく。そしてようやくお互いを「BUDDY(絶対的な信頼関を置く相棒、というような意味らしい)」として認めたと同時に、度重なるムチャな戦闘によるダメージの蓄積によりエックスは最後の時を迎える。自分の最後が近い事を鉄兵に告げたエックスは、自分の命がある限り、鉄兵の目的の手助けをすると決意する。

今のオレにできることはこのまま最後の力が尽きるところまでとびつづけるのみ。
鉄兵、おまえを一歩でもエリアに近づけてやることだけだ。
だからたとえひとりになってもくじけるな。かならずエリアにたどりつきおまえの目的をはたすのだ…。

コレですよ、コレ!!

臭いだの、暑苦しいだの揶揄されようと、今の少年誌にマンガを連載しているマンガ家にココまでの「絆」を描ききれるマンガ家がどれだけいるだろうか!!ココでの鉄兵とエックスの深い信頼関係を描く為だけに、先述したB‘Tの設定があったんじゃないかと思えるほどのこの熱い展開はもう目が離せない。

確かにせっかくアニメ化したにも関わらず、物語の半分程度を消化した時点で番組は打ち切られ、関連商品がヒットした訳でもない。せいぜいアメリカでそこそこの支持を受けて、日本未発売のB‘Tが向こう限定で売られたとか、その程度の展開しかなかった作品である。後に同じ「少年エース」で連載がスタートする「新世紀エヴァンゲリオン」のような話題性も呼べなかった。全体的には車田作品の中でも特にマイナーで、知っている人もあんまりいない作品ではある。

上で述べたような印象的な演出を生み出したB‘Tという設定にしても、「聖闘士星矢」の亜流、等と言われる事も多いし、

「B‘Tの弱点はご丁寧に背中に乗せているドナーだ」
「意志を持つロボットなら人が乗る意味が無い」

等と、悪しき意味でのネタにされる事も多い。でも、リアルリアルと暴走して現在壊滅状態なロボットアニメの中で、確かに亜流になる存在かもしれないものの、その本質には物凄く熱い物が宿っている作品…それが「B‘T X」なんじゃないだろうか。

後半は、「ドラゴンボールZ」的な最強のインフレに陥るものの、鉄兵以外…フォウ(ムラサメではない)や北斗、ロン…更にはアラミスやメタルフェイス、ジャグラーといった敵(?)側の見せ場もあり、バトルアクションマンガとして十二分に楽しめる内容になっている。機会があったら読んで見て、その熱さを体験して欲しい。

余談だが、テレビアニメ版では鉄兵が拳にはめているメサイヤフィストがラスボス(笑)ラファエロの細胞を用いたもの、という事が語られていたのだが、マンガ版ではその設定は一切語られる事が無かった。この辺のネタも、結構面白く使えたネタなんじゃないかな、と思うと少々残念な気もする。


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