ゲーム「DS西村京太郎サスペンス 新探偵シリーズ 京都・熱海・絶海の孤島 殺意の罠」より 第2話「愛憎の箱庭」

まだゲームボーイという呼称が残っていた時代に発売されて大ヒットしたゲーム「逆転裁判」を引き継ぎ、更に相性が良い”タッチペン操作”のおかげでニンテンドーDSには結構な数の推理系アドベンチャーゲームがリリースされている。その中には有名作家が脚本、監修、というのをウリにしたゲームがある。今回ネタとする「西村京太郎サスペンス」も、「十津川警部シリーズ」で有名なトラベルミステリーの大家、西村京太郎先生が原案、監修を務めたゲームである。
私自身、アドベンチャーゲームは所詮「お使いゲーム」という認識しかなかったのだが、ふと購入してみた「逆転裁判」シリーズにハマッてしまって色々他にも手を出してしまったりもした…そんな中で、一番個人的にヒットしたのが、今回紹介する「DS西村京太郎サスペンス」であったのだ。今回はこのゲームを紹介がてら、本シリーズの中でベストエピソードと思う「愛憎の箱庭」を語っていこうかと思う。

エピソード解説
3年もの放浪生活に終止符を打ち、亡き父の後を継ぎ探偵になる事を決意した一新だったが、あてにしていた父親の助手にして幼馴染の京明日香は探偵事務所を畳み、京都の旅館で第二の人生を始めていた。その旅館で事件に巻き込まれつつも、何とか彼女を説得し、探偵業に復帰して貰える事になったのだが、一新達は東京への帰路の途中、新幹線の爆弾騒ぎに巻き込まれ犯人扱いを受ける。元刑事の県の協力もあり、何とか警察から解放された一新達であったが、新幹線の後ろに座っていて、爆弾騒ぎの中熱海に消えた見覚えのある男の調査をするうちに、またしても殺人事件に巻き込まれる。

今回、先ずお詫びせねばならないのはネタバレの件になってしまうだろう。このエピソードを紹介するに当って、ネタバレをしないで書くとその中身を良く伝えられないモノとなるのは明確である。ただ一応「推理モノ」という事を前提に、ネタバレは極力避けるつもりなのでその魅力がちゃんと伝えられないかも知れない事を、本文を書く前に先ず、前もって謝罪しておきたい。

さて、今回紹介する「DS西村京太郎サスペンス」は、乳揺れ格闘ゲーム「デッドオアアライブ」やらトラップシミュレーション「影牢(刻命館)」、アクションゲーム「ニンジャガイデン」等で知られるテクモがリリースしたゲームで、今回紹介する「京都・熱海・絶海の孤島 殺意の罠」の他、続編として「金沢・函館・極寒の渓谷 復讐の影」が発売されている他、西村京太郎氏とも親交があった故・山村美沙氏原案・監修の「DS山村美沙サスペンス」も同じくテクモからリリースされており、コチラは二時間ドラマでも題材となった山村氏執筆の人気キャラクターである祇園の舞妓小菊、記者キャサリン、葬儀屋石原明子、といった面々がそれぞれ主人公として活躍する作品となっており、舞台もモチロン京都となっている。

いきなり余談ではあるが、この「DS山村美沙サスペンス」では山村氏の原作通りキャサリンがアメリカ人となっているが、TBSの二時間ドラマでお馴染みの「名探偵キャサリン」シリーズは一応元ネタは同じなのだが、配役の都合もあり主人公はかたせ梨乃さん演じるカメラマン希麻倫子(きあさりんこ)で、キャサリンというのは彼女のニックネーム、という形になっている。この辺がよく分からない人は、サスペンス好きのお母さん方に聞いて見ると良いかも知れない。

さて、実の所、私自身は未プレイではあるが、西村京太郎氏の名を冠したテレビケームというのは昔からあったりもする。しかし、その殆どが氏の創作した人気キャラクターである十津川警部、ないしその相棒である亀井刑事を主人公としたものなのだが、今回はキャラクターも新規に設定し直されている。一応、メインとなる2人のキャラクターを紹介しておこう。

新一新
”しん いっしん”ではなく”あらた いっしん”という、何となく「釣りキチ三平」を髣髴とさせる名前の35歳。普通のサラリーマンだったが、元刑事で探偵の父・賢新がとある事件で殺された事をきっかけに、海外へ現実逃避の旅へ出ていた。今回、亡き父の後を継ぎ探偵となるべく帰国、父の優秀な助手であった明日香を連れ戻す為、京都の老舗旅館へ向かう。父親譲りの洞察力と正義感を見せる事もあるのだが、年齢の割に少々落ち着きがなくどこかぬけている。相棒の明日香には基本的に逆らえない。

京明日香
28歳。一新の父・賢新の助手をしていた女性で、極めて優秀な探偵。一新が海外に逃亡した後も、しばらくは1人で賢新から引継ぎ事務所を切り盛りしていたが、現在は京都の老舗旅館で仲居をしている。一新とは幼馴染でもあり、尻に敷いているフシがある。勝気でしっかり物の美人ではあるが、しばし見せる一新とのやりとりは漫才じみている。ちなみに「2」ではバスタオル一枚だけ、というサービスカットあり。

さて、このゲームであるが、ゲームとしては”本格推理サスペンス”という名目を謳ってはいるのだが、その実、本来のウリは違っている様に思える。実際、ゲーム自体の難易度は、このゲームをクリア出来ない人にお目にかかりたい、という位の難易度の低さ…選択肢を間違えてもペナルティーを受ける様な事は無く、即ゲームオーバーなんて事も無い。重要な証言、証拠を入手したらわざわざ「もうここは調べたな」的なセリフが出るわ、次に移動しなくてはならない場所に「!」マークがつくわ、至れり尽くせりなのだ。むしろ、この「DS西村京太郎サスペンス」は推理ゲームとしての面白さを追求したものではなく、往年の…「火曜サスペンス劇場」といった二時間サスペンスドラマの再現を目指したものなのだ。

何せ、ゲームのタイトルテーマはそれこそ「火サス」のそれを思わせるショッキングかつ派手なものであるし、エピソードを進行していく途中でもこの「火サス」チックなテーマが流れ、ストーリーテラーの京太郎くんが現れてこれまでの物語を解説する…コレのタイミングが、まるでドラマを見ている時のCMの様だったりもする。それに尚且つ主人公とヒロインの関係、コレにしたって何となく2時間ドラマにありそうな設定だ。トドメに、プレイ時間も1エピソード辺り…物語を良くかみ締めながらやっていくと大体1時間半から2時間位になる。このゲーム、本格的な推理サスペンスを求めてプレイすると肩透かしを食らってしまう難易度であり、そういうモノを求めてプレイする事は私はオススメ出来ない。でも、「火曜サスペンス劇場」とかを面白がって見ていた様な人には、その2時間ドラマ的なベタッぷりが味わえる貴重なゲームであると言えるのではないか。テレビで二時間枠のサスペンスドラマが淘汰されつつある現状を鑑みれば、コレはある意味貴重なのかもしれない、とさえ思うぞ。

さて、今回の主題である「愛憎の箱庭」であるが、この事件の注目点は、他の2編とは異なり、「真犯人発覚後に犯人が悪人へ豹変しない」という点であろう。他のエピソードは、一新が犯人を追い詰めた後、自白と同時にその態度も豹変する。(というか、ラストのエピソードでは犯人発覚前から既に豹変していたりする)しかし、この「愛憎の箱庭」では犯行…即ち殺人が極めて計画的になされてはいるが、犯人自身はその罪に開き直ったりはせず、自らの犯行とその動機を静かに、切々と語る…。実はこの「愛憎の箱庭」というのも、ラストの真犯人の独白に非常に関連したものとなっている位なのだ。そういう点で言えば、全部で3つあるエピソードのうち、このエピソードのみが一新と明日香ではなく、真犯人が主役となっている、とさえ言えよう。真犯人達の動機が、何ともせつなく…むしろ被害者の方に同情の余地が無い…。ラストでの真犯人の独白、そしてあまりにも悲しい結末は、正直、聞いているのが辛い…そうとまで思えてしまう。

ネタバレ禁止なので詳しく書けないのが大変もどかしいのであるが、真犯人の行動のキーワードともいうべきものは、「友達」「仲間」といったものだ。そして、真犯人にとっての「友達」の中に、1人だけ真犯人とは違う「友達」という価値観を持っていたキャラクターがいる。このキャラクターの、「友達」に対する言葉…コレは、真犯人の動機を踏まえると大変に重いものとなる。彼の言葉は、ある意味で真犯人にとっては酷な言葉にも聞こえる…ただ、その実、彼の言葉の方が「友達」に対して優しく…友達を思っての言葉に聞こえるのだ。そして、彼の言葉、思いがあったからこそ、より一層真犯人の独白が切なく、悲しく聞こえてしまう。ネタバレ防止の為にやや無責任な物言いになってしまうのだが、この辺りの切なさは、是非プレイして見て体感して欲しい。

…あー、ネタバレ禁止がもどかしい…。
ともあれ、ゲーム性は皆無とは言わないがそれに近い、最早「読み物」レベルでゲームとしては大変物足りない「D西村京太郎サスペンス」ではあるが、”推理サスペンス”ではなく”二時間サスペンス”として考えればエピソード自体はかなり面白い。オマケの推理クイズ(というか、頭の体操)の「ウェストビレッジ」も、本編であまり頭を使う場面が少ない分を補ってくれているので、何となく時間を持て余し気味な時にはもってこいのゲームだ。主人公の一新&明日香の関係も、「逆転裁判」の様な濃さこそないものの、そのある意味ベタな設定は安心して楽しめる。キャラクター絵がキレイに描かれはいるが、やや無個性、というのも逆に返せば万人受けする、とも言える。そもそもヘタな萌え絵みたいなのでは少なくともこのドラマには似つかわしくないのだし…と言いますか、ヒロインの明日香ちゃん、クスッと笑ったグラフィックなんか可愛いと思うぞ。(笑)

私はこのゲーム、出張先で旅館に帰ってからの暇つぶしとして重宝した。本を読むほど体力(気力)はない。かといって続き物のTVドラマなんか見たかない、という人に特にオススルしたい。気軽にやるには良いゲームなのだ。

ネタバレ禁止の縛りのせいで、読み直してもあんまり面白くないので「ネタバレ解禁バージョン」も書いたので、ネタバレしても良い人、もうプレイした事がある人などは合わせて読んでやって下さい。


オタク的ネタ考察
1.テクモでリリースされた「西村京太郎サスペンス」と「山村美沙サスペンス」であるが、この原案、監修を務めたミステリー作家2人は家族ぐるみで親交があったことで有名。きっかけは新進の作家だった頃の西村氏に山村氏がファンレターを送った事で、2人は京都で旅館を買い取って、本館と別館に分かれて生活していた事もあるらしい。ちなみに女優の山村紅葉さんは山村美沙氏の妹で、姉の作品だけでなく西村氏の作品にもドラマ化した際よく出演している。

2.西村氏の創作した代表的なキャラクターと言えば、やはり十津川警部であるのだが、「DS西村京太郎サスペンス」にも十津川警部は相棒の亀井刑事と共に、名前だけではあるが出演している。

3.オマケの推理クイズ「ウェストビレッジ」は問題の冒頭に「矢島喜八郎」なる人物の名言が紹介されるのだが、この「矢島喜八郎」とは西村京太郎氏の本名。中々に味わい深い言葉が多かったりするので要チェックだ。


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