アニメ「無敵鋼人ダイターン3」 第19話 地球ぶった切り作戦
脚本:星山博之 絵コンテ:石倉山羊 演出:貞光紳也


さて、ココ「一話一会」で前回ネタにした「THE ビッグオー」で、散々引き合いに出した「無敵鋼人ダイターン3」であるが、この作品、「無敵超人ザンボット3」の後番組としてスタートしたのだが、富野調ともいうべきドロドロとした展開に比べ、ひたすらに明るく、コミカルながらオシャレという全く正反対の手法で描かれている。放映当初、前番組「ザンボット3」とは全く違う展開によって違和感を受けてしまった人も多いのだが、その一方で「ダイターン3」を根強く支持し続け、「隠れた名作」とするファンも多い。
前回のコラムでは「THE ビッグオー」の作劇法や顛末に満足し、支持しているファンに総スカンを食らってしまいそうな発言が多かったのも、当時私が「ビッグオー」と平行してこの「ダイターン3」を見ていたからに他ならない。

エピソード解説
巨大なチェーンソーを持つメカ・ブッターギルンによって地球を真っ二つにする作戦を立案したコマンダーバンチャーは、メガノイドの中でも落ちこぼれの最低ランク。当然彼の作戦にコロスとドン・ザウサーが期待する筈も無く、彼の作戦遂行に際し与えられたのはたった二人のコレまた落ちこぼれソルジャー。
作戦実行の為にブッターギルンにて地球へ向かうバンチャー達だったが、ブッターギルンは故障で月に不時着してしまう。そんな彼等の元に丁度地球から宇宙船がやって来る。この宇宙船のエンジンを奪って地球に向かおうとしたバンチャー達だったが、その船に乗っていたのはあの破嵐万丈だった。


はっきり言って、前回の「一期一会」のコラムは「THE ビッグオー」のエピソードを扱っていながら作品自体にはいささか否定的に展開した為、ファンからは文句を言われかねないものだったと我ながら思っている。そんなコラムの引き合いで今回紹介する「無敵鋼人ダイターン3」の名前を出しているのだが、思えばこの作品、「スーパーロボット大戦」に登場しているので比較的知名度こそ高いが、その内容まではあんまり知られていないようにも思える。何せ「スパロボ」では中々メガノイドのネタは扱われず、初めて登場した「第4次」でも、登場したのはコロスとドンザウサーのみ。「ダイターン3」の作品性も影響しているのだろうが、何とも…。

そういう事も影響して、「THE ビッグオー」を支持している人が私の前回のコラムを見て思ったであろう

「お前がそんなに大層な誉め方をする『ダイターン』がそんなに面白いアニメなのか?」

という意見への反論と言う事で、今回は「ダイターン3」でも名エピソードに数えられている「地球ぶった切り作戦」を紹介しよう。
このエピソード、コロスやドン・ザウサーが活躍する訳でもなく、驚くべき事にコマンダーバンチャーの目的を万丈が最後まで知らないまま終わっているという、ドラマ展開上での核とはかけ離れたエピソードではあるものの、実は私はこのエピソードこそが、最も「ダイターン」らしいエピソードなんじゃないか?とまで思ってしまう。

さて今回の「地球ぶった切り作戦」とは、地球を一周してしまう程長い回転ノコギリで地球を真っ二つに割り、その割った面をメガノイドの人間牧場にするという、徹頭徹尾全部間違ってるトンデモな作戦。よくドン・ザウサーも採用したもんだなぁ…。
とと、それはともかく、ダメコマンダーのバンチャーと、彼の部下ドビンとデガラシーのやり取りが非常に良い。万丈の呼びかけで飛んで来たダイファイターを巨大マグネットで吸引し、拿捕に成功した3人は抱き合って喜びつつ、これからは3人で良い夢を見よう、と約束する。普段のエピソードでは今まで描かれる事が一切無かったメガノイド側のこの描写が、最後の最後でこの物語の評価に大きく影響する。

ブッターギルンの回転ノコ攻撃で万丈達を追い詰めたバンチャー達…コレでもっと沢山のソルジャーを抱えて出世が出来る…もうバカにされずに済む…互いに思わぬ幸運を喜び合う3人だったが、部下のデガラシーの脳裏にふと嫌な予感が過ぎる。自分達より優秀なソルジャーが沢山バンチャー様に仕える様になったら、私達落ちこぼれソルジャーなど相手にしてもらえなくなってしまうんじゃないか…そんな心配をする2人に、上司であるバンチャーはこう答える。

「何を言っている。3人で良い夢を見ようと言ったじゃないか。第一、私以外に誰がお前達のような落ちこぼれソルジャーを使ってくれると言うんだ。」

その優しい言葉を受け、涙しながら抱き合う3人。…なんか、ジーンときちまうんだよなぁ…。(苦笑)
しかしそんな彼等の夢は呆気なく破れる。レイカ達をオトリに、単身敵の司令室に乗り込んだ万丈によって、いとも呆気なくバンチャーの大切な部下…ドビンとデガラシーは殺されてしまうのだ。

大切な部下が殺された事に激情したバンチャーは自らメガボーグになり、涙を浮かべながら万丈のダイターンに戦いを挑む。
怒りから、もはや部下の仇を討つ事しか頭に無いバンチャーの苛烈な攻撃に苦戦する万丈は、バンチャーがなぜ「落ちこぼれのコマンダー」なのかを理解する。

そう、メガノイドはいわば自分のエゴを強化した改造人間で、たった2人のソルジャーの為に命懸けで戦えるコマンダーなど、メガノイドの定義からすれば完全に失敗作の落ちこぼれなのだ。
バンチャーは優し過ぎたのだ。優しい人間だったが為に、メガノイドとなっても落ちこぼれにしかなれなかったのだ。

このエピソードの直後、第20話「コロスは殺せない」では、仲間を見殺しにしてでもメガノイドを根絶やしにしようとする苛烈なまでの決意を見せつける万丈ではあるが、このバンチャーの行動には感銘を受けたようだ。その感銘とは、メガノイドの意外な行動とかそういったものではなく、人間の本質というか、もっと複雑なものだったに違いない。この複雑な余韻こそが、「無敵鋼人ダイターン3」を「人間劇場」たらしめているのは間違い無いだろう。

戦いを終えた万丈は、そんな愛すべき落ちこぼれメガノイド達の為にわざわざ墓を作る。
「そんな奴ほっとけば良いのに」という仲間の言葉を受け、「いやぁ、ね」と誤魔化す万丈…メガノイドに対し過剰なまでの怒りをぶつける万丈の、これも一面である。


オタク的視点によるポイント
1.万丈は、バンチャー達の名前も知らず、更にその目的…何を目論んでいたかすらも知らないままエンディングを迎えている。コレも物語に複雑な余韻をもたらしている一因であろう。

2.このエピソードとは関係無いが、第33話の絵コンテや作画監督の只野泰彦とは安彦良和氏のペンネーム。
「ダイターン3」のDVD−BOXに付属する風間洋氏のコメントによると、当時「ダイターン」のスタッフは非常に楽しそうに仕事をしていたという。氏の話によると、当時は小さかったサンライズでは、別のスタジオからヘルプがかかる事が日常茶飯事だったのに、ナゼか「ダイターン3」では1度もヘルプ要請が無かったとの事。
キツい環境であっても、「ダイターン3」はスタッフの方が積極的に遊んで、楽しんで作った作品だと言うことが伺える逸話だ。
ただ、この「ダイターン3」は本放映時に再放送を挟んだりもしており、コチラは制作サイドの環境が非常にキツかったというのを証明していると言えるだろう。まぁ、「ガンドレス」みたいに未完成版を見せられるよりは、再放送の方がまだマシな気がするが。

3.当時、サンライズには富野氏を始め元タツノコプロのクリエイターが多かったのだが、本エピソードにおける「ブッターギルン」「バンチャー、ドビン、デガラシー」というネーミングセンスにも、何となくタツノコ臭が感じられる。(ような気がする)ちなみに今回登場のトンデモメカ・ブッターギルンは第34話で再登場。本エピソードのフィルムまで再登場している。

4.この「ダイターン3」は、メガノイドのソルジャーこそがスタッフの遊びを最も反映しているキャラクターなんじゃないだろうか。今回の「地球ぶった切り作戦」を始め、第32話「あの旗を撃て!」等ソルジャーが活躍するエピソードには面白いものが多い気がする。


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