アニメ「THE ビッグオー second season」 第18話 The Greatest Villain
脚本:小中千昭 作画監督:羽山賢二 メカ作画監督:まさひろ山根 
ストーリーボード:米たにヨシモト 演出:中村賢治


アニメ「THE ビッグオー」は有料衛星放送チャンネルにて制作されたロボットアニメで、一部のファンの間で話題になった作品である。40年前に全ての人間が記憶を失った街「パラダイムシティ」のネゴシエーターである主人公ロジャー・スミスと彼の操るメガデウス(=巨大ロボット)の活躍を描いた本作は、アメリカにて特に好評を博したらしく、カートゥンネットワークにて続編が制作された。この「ビッグオー」という作品、キー局であるWOWOWの番組枠の都合で13話という短期放映を余儀なくされた作品という事もあり、この「second season」も「デッドエンド状態の物語にキチンとした結末を!!」というファンの声に答える形となった。
…しかし、現実というのはそう甘くないという事は「second season」の放映が日本で終了した直後のサンライズ公式HPに書かれた意見が証明してしまっている。

エピソード解説
ロジャーへヨシフラ・ヤカモト・インダストリーの法律顧問からネゴシエイトの依頼があった。ヨシフラ・ヤカモトはシティのドーム建設に携った最大手建設会社である。しかしその事務所に向かったロジャーは突如消息を絶つ。ヨシフラ・ヤカモトではあのベックがまたもや姑息な姦計を巡らせていたのだ。ベックはどういうワケかビッグオーのドミュナスがロジャーである事を知っていた。そんな時、ロジャー解放の為意外な交渉人が駆け付ける。

まっことややっこしいのだが、「いかにも輸入作品的な臭いを放つ日本で制作されたアニメ」が逆に海外へ輸出され、そこで好評を博して続編が作られた。しかしその続編を作ったのも海外のスタッフではなく日本のスタッフで、今度は海外に出た輸入作品的ジャパニメーションが海外で評価され、海外で放映する為に日本のスタッフに作られた続編が日本に輸入された」というのがこの「THE ビッグオー second season」というアニメ作品である。

本作は「ウルトラマンティガ」や「魔法使いTai」の作品で一部に熱心な支持者を持つ小中千昭氏や、「OVAジャイアントロボ」のさとうけいいち氏、片山一良氏等を中心に制作されており、そのミステリアスでレトロな世界観で結構な人気を博した本作ではあるのだが、逆にこの作品は「パクりの嵐」とか「中学生レベルのハードボイルド」等という酷評を受けている作品でもある。

確かに本作のオープニングは「謎の円盤UFO」、1stシーズンの方は「フラッシュゴードン」のデッドコピーと揶揄されるようにクリソツであるし、他にも手の構え方が「レッドバロン」風だったり、「ロボット刑事K」を思わせるキャラクターが出て来たり…そもそもがメインキャラクターのポジショニングからして「バットマン」そのものだったりと、何らかの作品から強烈にインスパイアしたもの…簡単に言ってしまえば「あからさまなパクり」が多い。元ネタを知らない世代は新鮮に感じてくれたかもしれないが、元ネタを知っている世代には失笑を買ってしまっていたのだ。

普通、「インスパイア」や「オマージュ」という作劇方法は元ネタを知っている人間が思わずニヤリとしてしまうような形で行うのが正しく、逆に反感を買うようでは意味が無い。そういった要素に限定すれば、この「ビッグオー」の作劇方法は完全に間違っている…というより、スタッフが完全に勘違いをしているのだろう。実際、マンガ版のコミック巻末にアニメのスタッフの対談が掲載されているが、ココにもこの勘違いっぷりが露呈していたりする。この辺は全部見た上で「大惨事」の方で語ろう。

そして、そこまで言うならどうすれば良かったのか?という答えがこの第18話「The Greatest Villain」にある。
この回、スタッフの話によると、構成段階で「1話くらい完全にお遊びのエピソードを作ろう」という話になって作られたのだが、少なくとも私は1stシーズンを含めて見た全てのエピソードの中で一番面白かったように思えた。もっともまだ2ndシーズンは全話は視聴していないし、第20話を見た段階で追いかけるのがメンド臭くなりつつあるのだが…。

このエピソード、脱獄したベックが因縁のあるロジャーに復讐するというネタなのだが、スタッフのお遊びが良い方向へ出ていて非常にコミカルな作りになっているのである。むしろ「ビッグオー」を見ているというより「ダイターン3」的なイメージであろうか。以降のエピソードへのフラグもヘッタクレもない内容なのだが、ムダにシリアスぶった挙句に「パクり」でしかなかったエピソードに比べれば作劇の方法が「パロディ」に終始しているので、少なくともいつも作品の根底に漂っている嫌味ったらしさは薄れている。

そして何時もの「ビッグオー」に対して感じる不快感というか、嫌味っぽさというモノの元凶は「パクりにしかなっていないオマージュ」にあるのではないだろうか。

ロジャーが自分の真似をするデク人形に対して怒り心頭というシーンも、「いつもハードボイルドぶってワケの分からん独白をするカッコツケ野郎の情けない正体」を象徴している様だし、ベックザグレートRX3がわざわざたった1回の合体シーンの為だけに専用音楽を流したり、カッコ良くミエを切っている最中にビッグオーのガトリング砲にハチの巣にされるといった演出は少なくとも嫌味は無く、大笑いまではいかなくともクスッとさせられる。

作中全然役に立っていないロジャーの「ネゴシエーター」という表の顔もそうであるが、ムダにカッコつけたりシリアスぶったりせずに、もっと単純に視聴者を楽しませる方向で作劇した方がこの「ビッグオー」は受けたのではないだろうか?「赤い風船」「トマト」「記憶を失った街」というようなミステリアスな要素はもう度外視してしまって、単純な1話完結式のヒーロードラマに古き良き時代へのパロディを織り交ぜる、というスタイルだ。

ジョナサン・ジョースターとは異なり「精神的に紳士」ではなく「外面だけが紳士」というロジャーが、ドロシーに冷静なツッコミを入れられつつも結果として悪を退治する事になる、なんて展開で、ロジャーは交渉相手の卑劣な手でコロッと騙されて仕事が上手くいかないイライラをビッグオーで発散している、というようなイメージはどうだろう?
敵側もベックやエンジェル、アレックス辺りをもう「悪の中ボス」…と、いうより「勇者シリーズ」のミフネやシャランラみたいな立場にしてしまう、とか。

まぁ妄想はともかく、この18話は「ビッグオー」は別路線の方が良かったんじゃないか、という事を痛感させられるエピソードだと私は思っているのだがどうだろうか。

オタク的視点からのポイント
1.今回登場するヨシフラ・ヤカモト・インダストリーという名称も何処か異国情緒…つまり「海外制作ドラマ的な作劇」という作品のイメージを高めている。こんな勘違い姓名にもらしさを打ち出している割に…。
ちなみにこの社員や事務所は外国人の考える日本人像を象徴している様でおかしい。常に団体で行動したり、所構わずバチバチ写真取ったり、同じような顔(水木しげる風)だったり…。

2.ベックザグレートRX3の合体時の掛け声「ファイナルトゥギャザー」は、「勇者王ガオガイガー」のファイナルフュージョンと「超電磁マシーン・ボルテスX」の「Vトゥギャザー」を合成したものと思われる。「ガオガイガー」はタカラスポンサーでサンライズ制作、「ボルテスX」は東映だが実制作はサンライズ。

3.何時もはキザったらしい言いまわしで独り善がりなハードボイルドっぽさを気取っている主人公・ロジャーは今回自分ソックリに作られた胸像が自分の目の前で自分のモノマネをする事に激怒し、プログラミングされた通りに動いているに過ぎないデク人形相手にひたすら怒鳴り散らすのだが、このシーンはこの回でも妙に印象的。
ロジャーらしさ、というのはこういう子供じみた事をする部分のような気がする。決して物語の冒頭で分かったような分からないような能書きをたれるのが彼の持ち味ではないのではなかろうか。大人だとかプロフェッショナルを自称する割に行動理念そのものは実に子供…コレがロジャーという男だし、そういった面から作劇して「パロディ」とした方が、少なくとも上でも触れているような酷評は受けなかったのではと私は思う。
もっともコレはスタッフ達の作家性によりこういう形になったのだから、今更こんな事を言うのも後の祭なのだが。


戻る