アニメ「オーバーマン キングゲイナー」 第16話 奮戦、アデット隊
脚本:大河内一桜 絵コンテ、演出:笹木信作 作画監督:重田誠一


一時期…「Vガンダム」やら「ブレンパワード」の頃と違い、富野由悠季氏が最近ミョーに元気な気がする。特に「Vガンダム」の時などはもはや捨て鉢のような発言を繰り返していた印象さえあった富野氏…しかし、「∀ガンダム」以降はミョーに元気一杯で精力的に活動しているようにも見える。そんな吹っ切れた印象さえある富野氏の作ったロボットアニメがこの「オーバーマン キングゲイナー」である。
ドラマは「エクソダス」と呼ばれる管理社会からの脱出が軸であり、2人の主人公、引き篭もりのゲームオタク・ゲイナーと、エクソダス請負人のヒーロー・ゲインを中心として非常に生き生き、伸び伸びとした作りになっている。この辺りも、ミョーに元気な富野氏の心根が反映されているのでは?と思えるのも、あながち勘違いではあるまい。

エピソード解説
前回のエピソードで「ヤーパンの天井」に保護されたガランガランのピープルが、アデット先生を隊長に担ぎ出し自警団「アデット隊」を結成した。帰るべき場所を失ったガランガランの民の為に戦う事を決意した彼等は、戦闘経験こそ無いが心意気だけは誰にも負けない。そんなアデット隊の武器強奪に巻き込まれたゲイナーは、シベリア鉄道の秘密基地に潜入する。しかしそこで待ち受けていたのはアデットにとってはかつての同僚(というより手下か?)ケジナンの乗るオーバーマン、幻影を操るメックスブルートだった。

実は、このコラムを書いている現在、私は「キングゲイナー」の全エピソードを鑑賞していない。しかし掲示板の方でリクエストが多数あったのでココは一つ、お客様の為…というのはタテマエで、かなり面白く感じたエピソードがあったので紹介したかっただけだったりする。

まぁそれは置いておくとして、この「奮戦、アデット隊」についてであるが、このエピソードでメインを張るのはアデット隊の面々…ではなく、彼等に担ぎ出されたアデット先生と、彼女に「押しかけ同棲」をされているゲイナーの2人である。第9話「奮闘!アデット先生」にてゲイナーに対し「見所のある少年だから私が直々に指導する」と強引にゲイナー宅に住みついてしまった彼女。そして彼女を少々煙たがっているフシのあるゲイナーが見せた、「絆」が本エピソードのテーマなのだ。

この前のエピソード「ダイヤとマグマの間」でデートに向かうゲイナーを尾行してどんな相手かを確かめようとする下世話ぶりを発揮しているアデット先生…例えるなら、妹の久美ちゃんがかつて自分と試合をした一歩と付き合い出した事が心配でしょうがないお兄ちゃん・間柴。(笑)コレは既にアデット先生はゲイナーの事を掛替えの無い「家族」と捉えている証拠でもあり、今回のエピソードへのちょっとした伏線だったのかも知れない。

しかしそんなアデット先生の思いも当のゲイナーにして見れば好意を寄せるサラへの体面というモノもあり、迷惑しているフシがある。アデット先生自身もその性格から「ただ面白そうだったから」なのかも知れない。まぁ、下世話っぷりを発揮したのはアデット先生だけでは無かったのだし。(笑)

さて、本題である。
今回の主役、アデット先生…豪快でガサツでブキッチョ…更に騒動好きな彼女ではあるが、その実エクソダス一向の中でも非常に世話好きな女性だ。ヤッサバの情夫だった頃にしても、彼女はヤッサバの男らしさから来る可愛らしさに惚れていたフシがあるし、なにより彼を立てて行動している部分も多かった。実際エクソダス側についてからも、かつての手下であるケジナン達には慕われていたようだし、そもそも世話好きじゃなければアデット隊の隊長などやらなかっただろう。

ただ、アデット先生がガランガランの民についたのは他の要因もある。それは、彼女が「よそ者」という点。
元はエクソダスを取り締まる側のシベ鉄警備隊の隊員であり、アナ姫救出の為ヤーパンの天井に潜入したものの任務は失敗、帰る場所を失ってしまったのだ。そんな彼女だからこそ、自分達の居場所…ドームポリスを失ったガランガランの民を邪険にする事が出来なかったのだろう。アデット先生、ガサツでケンカ好きな普段の行動に隠れてしまいがちだが実はとても可愛らしいお姉さんなのだ。

そして彼女とゲイナーにも共通点がある。惚れた男、更に仲間と離れ離れになってしまったアデット先生に対し、ゲイナーは両親を失っている…つまり、2人とも大切な「家族」を失っており、そしてその原因になっているのが、現在仕方ナシに行動を共にするハメになっているヤーパンのエクソダス…2人とも、このヤーパンの天井という世界では孤独なのだ。だからこそ、ゲイナーは時にゲームに没頭して現実の煩わしいものから逃れようとするのだし、シベ鉄に帰れなくなったアデットは教師になるまで酒浸りの生活を送っていたのだろう。2人とも誰か…気を許し合える「家族」に飢えていたのかも知れない。アデット先生がゲイナーと「押しかけ同棲」しているのはこういった孤独感から解放されたいという思いがあったのかも知れないし、ゲイナーの方にしても、1人で暮らすよりは…という思いがあったのかも知れない。

そして、守るべき「家族」を得たアデット先生は、「家族」にムリをさせたくないからムチャを承知でオーバーマンを強奪しようとし、

「オーバーマンさえ手に入れれば、アイツだけに戦わせるなんてそんな情けない事をやらずに済むんだ!!」

と叫ぶ。
そんな彼女の思いを受け止めたゲイナーも、

「アナタはボクの家族なんでしょう?そう思ってくれるなら、ボクにとってもアナタは大切な家族なんですよ!!」

と彼女を受け入れる。
「キングゲイナー」以前、富野氏は家族というものを歪んだ形でしか表現しない作家だと思っていたのだが、それは誤解だったのかも知れない。昨今、アニメオタクやらゲームオタクの間にある

「『義』のつかない妹は本当の妹ではない!!」

なんて風潮に正直苦々しい思いがある私だが、このエピソードに心を洗われた気分にさせられてしまった。
ガサツでブキッチョなお姉さんと引き篭もりのゲームオタク…そんな2人が見せたお互いを思う心…つまりは、一見ハチャメチャなコメディに隠されたこの「絆」という名の清涼感こそが、私がこの「奮戦、アデット隊」というエピソードに惹かれる理由なのだ。

オタク的視点によるポイント
1.今回のもう1人の主役と言えば、やっぱりシベ鉄のケジナン。
彼がドサクサまぎれに取った行動は、やっぱり同じ富野監督作品の「戦闘メカ・ザブングル」のキッド・ホーラと同じである。そう言えば、ケジナンとエンゲのやり取りは何処となく「ザブングル」のホーラとゲラバのやり取りに似ている気がする。多分考え過ぎだとは思うが、第19話に登場するゲインの旧友・エリアルのキャラクターデザインも、ジロンの成長した姿を連想させられる。
ともあれ、本エピソードにおけるケジナンのワルノリは必見だ。特に幻影を失ったメックスブルートの姿は…ケジナンらしいよなぁ…アレ。(笑)

2.今回、シベ鉄に拘留中のアスハムがジャボリの女心をついて脱走を試みる。歯の浮くようなセリフを吐いた後、「まるでゲインじゃないか!!」と1人憤る彼の姿は可笑しい。
しかし脱出自体はシンシアにより阻止される。捕まえたアスハムを基地に連れ戻す際に交した2人の会話は、今後の2人の関係を匂わせる伏線だろう。

3.今回たった2回、しかもセリフも2つしかなかったもう1人の主人公・ゲイン。
でも美味しいシーンで美味しいセリフを吐いてくれるのは流石。
「いいよなぁ、お揃いって」


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