特撮「超光戦士シャンゼリオン」第38話より 「皇帝の握ったもの」
監督:長石多可男 脚本:井上敏樹


最近はまった「うんちくシリーズ」という雑学漫画の主人公・雲竹雄三の決め台詞「知っているか」を見ていて、ふと思い出したのが今回紹介する「超光戦士シャンゼリオン」のライバルキャラクター・暗黒騎士ガウザーこと黒岩省吾。彼の決め台詞も、まさしく「知っているか」だったのだ。この黒岩というキャラクター、古今東西の悪役キャラクターの中でもある一点により有名な存在だ。それは、都知事選…選挙に出馬し、当選を果たした、という点。そんな彼の最後は何とも子供向け番組らしからぬものであり、一部地域では放送が見合わされている。確かに過激、かつやや言葉足らず気味ではあったが、そのインパクトは抜群だった。今回はそのエピソードについて語りたい。

エピソード解説

東京に独裁国家を作り上げた黒岩は、人間とダーグザイドの遺伝子を掛け合わせたハイブリッド生命体を生み出す計画を企てる。人間をテストし、知能指数の低い者はラームを吸い取って殺してしまう。その頃、黒岩の仕掛けたハニートラップに引っ掛かっていた暁もようやく脱出し、黒岩と対峙、決着をつけるべく戦いを開始。そこに父親を黒岩達に消され、ショック状態の少年を連れたエリが現れるが、黒岩への説得もむなしくエリは黒岩と決別する。S.I.D.O.Cに保護されていた少年・達広は意識を取り戻し、都内を徘徊するうちに同じ境遇の子供達と出会い、やがて軍の武器庫にたどり着いて…


本作、「超光戦士シャンゼリオン」は何ともユニークな作風だった。主人公の涼村暁が私立探偵というのはまぁ、ありがちなれど、その性根は目立ちたがり屋で軽薄、女好きで遊び好きの超浪費家で多額の借金を抱えてすらいたし、使命感や正義感といったものが徹底的に欠如したヒーローだった。後半、第二のヒーローとして速水がザ・ブレイダーに変身出来るようになったものの、その方法が梅干し食べてスッパマン。正義感が強く実力もあるが、少女の悲鳴を聞きつけるやダーグザイドの怪人との戦いを放り出してゴキブリ退治に向かってしまう考えなし…とにかく、今までの特撮ヒーローモノの概念をすっ飛ばしてしまった様な作品だった。

その特異な作風が、まだケツの青かった自分には何とも悪ふざけが過ぎる…不真面目、と映っていた。だから個人的には当時は「シャンゼリオン」より古典的な「仮面ライダー」路線…というより中身もほぼ踏襲している為逆に新鮮味が皆無な「ガイファード」の方が好印象だった位なのだ。そんな評価をひっくり返したのが、37、38話で描かれた暗黒騎士ガウザーこと黒岩の最後を描いたエピソードだったのだ。

何せ、悪役の幹部的キャラクターが選挙に出馬し、当選を果たしてしまう。世の中の特撮作品には数多くの悪役キャラクターがいるが、自らの野望を政治で、民主的な方法に則って実現しようとしたのはこの黒岩位なものなんじゃないだろうか。最も、最終的には都知事の座をよりによって暁に譲渡し辞任。その後は東京都を日本から独立させるクーデターを起こし、自ら東京国初代皇帝となる訳で、完全に人間側のルールに則っていた訳ではないものの、その行動はかなり印象的と言えよう。しかもこのエピソードで黒岩の命を奪ったのは宿敵である暁…シャンゼリオンではなく、自身が野望の為に始末した、普通の人間の子供であったのだ。

ダークザイドは元々闇次元と呼ばれる異次元に住んでいた存在で、闇次元が滅亡寸前となったために人間界に移り住んできた存在。普段は人間の姿で潜伏しているが、人間界で生きるには人間の生体エネルギー・ラームが不可欠…という設定があるが、人間を餌として見ている前提はあるものの、基本的な行動原理はあまり人間と違いが無く、人間関係のストレスから胃潰瘍になったり鬱病になったものすらいる。そして、黒岩は人間…しかもダークザイドにとっては敵であるエリと恋に落ちる…という所まで行ってしまった男。ある意味、ダークザイドの中で最も人間に近い存在と言えるのかも知れない。

そういえば、ガウザーは他の…例えば闇将軍ザンダー等とは異なり、ダークザイドの中でも異端…という事で知られる存在だったという。そして人間界へ来てからは「黒岩相談所」なるものを立ち上げ、人間界での生活に悩みを持つ同胞達…ダークザイドの相談に乗り、アドバイスや、場合によっては仕事を斡旋したりしていた。そう、初手からかなり悪の幹部らしからぬ…むしろ人間的な行動を取っていた訳だ。そんな訳でエリとの恋愛なんかもあった訳だが、結局の所黒岩はあくまでダークザイド…人間に近しくとも人間を真に理解するには至らず、結果東京国設立に向かったのではないだろうか。

そんな黒岩を止めたのが、シャンゼリオンではなく親を殺された子供達による復讐、な訳だが、「自分が弱い虫けら以下の存在」と蔑んだ者からのまさかの報復を受けた黒岩は、自身へ本気で憎悪を向ける子供達に撃たれた事により真の意味で人間を理解したのではないか。捕食者である筈のダークザイドこそが、実は人間社会に寄り添い生きるしかない弱者である事、そして捕食者であるが故、決してダークサイドは人間とは相容れないであろう事を。

ある意味、この辺は奇しくも「シャンゼリオン」の1年前に完結した漫画「寄生獣」に近いものがある気がする。例えば人間の捕食者ながら人間に依存しないと生きていけないパラサイトや、広川の選挙出馬など、「寄生獣」の終盤で描かれたテーマは何となくダークザイドや黒岩の行動に重なるものがある。ひたすら悪ふざけ、おちゃらけた印象ばかりだった「シャンゼリオン」だが、この黒岩の一連の行動と最後に関しては、この作品らしからぬ重い何かが仕込まれている…そんな気がするのだ。

「撃ってみろ! もう一度…自分達が虫けらでない事を証明して見せろ!!」

と自分を撃った復讐者に言う黒岩の心中にあったのは、果たして…悲しみだったのか、満足だったのか…。


オタク視点的ポイント

1.この「超光戦士シャンゼリオン」のスポンサーはセガだが、同時期にやはりテレビ東京系6時代の枠で放送されていた「七星闘神ガイファード」はカプコンがスポンサーを務めていた。ちなみに「ガイファード」のスタントやアクションは「ビーバップハイスクール」等の高瀬道場が担当しており、そのせいか殺陣が何となくヤンキーっぽいのが特徴。ゲストで「装甲騎兵ボトムズ」のキリコ役で知られる郷田ほずみ氏も出演している。

2.黒岩は「知っているか!」または「知らないのか?」から始まる正しいのか間違ってるのか良く分からないウンチクを、ベートーベンの第9第2楽章をバックに語り出すのが恒例となっているが、主人公にウンチクがでたらめである事を指摘されるエピソードもある。ちなみに、世界で初めての手術のウンチクの際の「麻酔無しでなぁ!!」という台詞はマニアの中で妙に人気が高い。

3.本作には意外なゲストとして「さんまのSUPERからくりTV」等に出演していたアメリカ人タレントのセイン・カミュ氏や、AV女優で「ぎるがめっしゅNight」等にも出演していた瞳リョウさんが出演している。特撮ヒロインを演じたタレントが後にヌードになったりAVに出演…というのはよく聞くが、当時現役(だった筈)のAV女優を一応子供向けとされる特撮作品に出演させる、というのはかなりレアなケースかと。

4.本作には変なエピソードが多い事で知られるが、「サバじゃねぇ!」というサブタイトルのエピソードがあり、しかも「サバじゃねぇ!2」まである。

5.本作の主人公、涼村暁を演じているのは、後に「仮面ライダー龍騎」で仮面ライダー王蛇こと浅倉威を演じる萩野崇氏。氏は「龍騎」の公式イベントでファンのリクエストに応え、氏シャンゼリオンの変身ポーズをとった事があるという。

6.この38話は子供が拳銃と手榴弾で復讐を果たしてしまう…というのが抵触したのか一部の地域で放送が自粛され、欠番扱いとなっている。


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