「GIRLS und PANZER」より 第4話「隊長、がんばります!」
脚本:吉田玲子 絵コンテ:水島努 演出:柴田彰久 作画監督:伊藤岳史



昨年最も話題になったアニメが「ガールズ&パンツァー」である事に異を唱える人はあまりいないだろう。「えぇ〜、戦車に美少女って…いくらなんでもないだろ」的な世間の下馬評を覆し、たった1クールアニメにも関わらず2度に渡る総集編や制作遅延で最終2話の放送が3ヶ月後…という大失態すら乗り越え、大絶賛され大団円を迎えたこの作品。私自身、丁度「ティーガー戦車隊 第502重戦車大隊オットー・カリウス回顧録」を読んでマイ戦車ブームが到来していたのでたまたま注目した作品だったのですが、回を重ねる毎に評価がうなぎ昇りで海外からも絶賛の嵐、アニメで登場した戦車が軒並み売り切れとなり人気が下火だったミリタリープラモにも特需…トドメに御当地アニメとして大洗町が官民あげてバックアップ…と、「ヤマト」「ガンダム」「エヴァ」といった作品とはちょっと違う形でヒットしたのが印象的。そのキッカケとなった最初のエピソードがこの第4話で、この回から「ガールズ&パンツァー」の評価が高騰する事に。
まぁ、ワタクシ実はコレを書いている時点では最終2話が視聴出来てない状態だったりするんですが…

「こんなことわざを知ってる?『鉄は熱いうちに打て』…」(CV:喜多村英梨)

エピソード解説
競合校・聖グロリアーナを迎えての大洗女子戦車道チーム初の対外試合。戦力的に劣る大洗女子は4号をオトリとした待ち伏せ作戦に出るも、練度の低さから逆に挟撃される結果に。窮地に陥った大洗女子の隊長・西住みほは生き残ったカバさん、アヒルさんチームと共に、市街地でのゲリラ戦に打って出る。


さて、私はこの記事を書いている時点でラストの2話は未視聴で、ネットとかでの記事しか知らないのだが、落とした事により上がったハードルや、逆にブランクにより下がるであろう視聴者のモチベーションすら軽く乗り越え各地で大絶賛されている。コレで私も安心してDVD(重ね重ね、ブルーレイなんか持ってないのだ、貧乏故)の購入を継続できる…と一安心している。

戦車というシロモノは、宮崎駿御大が色々書いているとおり、実にアニメで描くのに不向きな題材だ。ただでさえ線が多くなるし、履帯や転輪の動きにしても同様だろう。そういう意味で言えば、戦車を主役として持ってきた本作はアニメ史上初の「戦車をキチッと描写したアニメ作品」と言えるだろう。勿論、今まで戦車が出てくるアニメが無かった訳ではないし、「特捜戦車隊ドミニオン」といった戦車を主役格に持ってきた作品もあるにはあるが、あまり使いたくない言葉なのだが"戦車をリアルに描写した"作品という点ではもう唯一無二…とまで言えるかもしれない。戦争を題材とした映画だって、戦後も使われたT34やシャーマンならまだしも他の車両に関しては代役…例えば「バルジ大作戦」に登場するケーニヒスティーガーはアメリカのM47パットン、シャーマンもM24チャフィーになっているし、「戦略大作戦」や「プライベートライアン」のティーガーはT34を改造したモノだったりする訳で、そういう意味では実車ではなくCGではあるものの、第二次大戦の戦車が動いている姿…という点で貴重と言えるかもしれない。それだけ戦車を気合入れて描いたからこそ、本作は固定ファンを期待出来ないオリジナル作品でたった1クールの作品にも関わらずヒットしたのではないだろうか。

ただ、幾ら「戦車をリアルに描く」とはいえ作劇上の嘘は散見する。分かり易い所で八九式やマチルダ、チャーチルはあんなに速く走れないし、他にも生粋のミリオタが見たら鼻で笑ってしまう様な描写、という奴はそこかしこにあるのだと思う。ただそれは作劇上、演出上の都合でもあり、逆に忠実に全てを再現してしまったらもっと眠たい映像となってしまう訳で、この辺のバランス感覚はスタッフ達のセンスの勝利…と言えるんじゃないだろうか。何より、戦車はおろか、ミリタリーに興味の薄い人にすら

「オレも好きな戦車とかについて語れる様になりてぇ」

と言わせるだけの魅力はあった訳で、ネット上でもアニメ放送後、そういったミリタリー知識が薄いファンの疑問や質問に、某掲示板等でミリオタが優しくフォローする…という事例も多く見られた。コレ、かなり上手い形でアニメ作品にネットを利用した良い例と言えるかと。そういう意味で言えば、間口を広げ、必要以上に小難しくしない、という観点で、一見奇異にしか感じられない美少女と戦車の組み合わせや、物語の根底でありながらかなり突飛な「戦車道」という設定も良い方向に働いたのだろう。思い返せば作中でのディープな説明台詞というのは戦車オタクの秋山殿の解説位しかなく、戦車の能力はおろか舞台設定、世界観といったものに関しての説明は全て映像、もしくは演出で説明している。例えば今回のエピソードで言えば

いきなり履帯が外れてしまうが外れただけなら修理すれば良いから白旗扱いにならない38(t)
折角の低い車高をノボリ立てて台無しにしちゃって撃破された3突
マチルダの背面を取って至近距離で撃ったにも関わらず撃破出来ず返り討ちにあう八九式

なんて形で上手い形で物語に導入している。説明台詞を必要以上に使わない事でガチガチに設定で固めず、かつ「想像の余地」…視聴者側で、「ああ、こう言う事なのかな」と想像したり出来る部分が残されているのがまぁ、心地よい具合になっている訳だ。

そして分かり易さ…という点の配慮もある。脚本担当の吉田玲子氏が何かでコメントしていたらしいが、本作のスジは野球漫画の「キャプテン」を参考にしたんだそうな。確かに、本作も王道的な展開と結末が特徴になっているが、戦車を題材=ガッチガチのミリタリーモノ…という構図にしてしまうと、本職ミリオタはともかくアニオタの食いつきは恐らく悪くなる…コレに対する答えが「女子の嗜み『戦車道』」というモノなのだろう。戦車のアニメを作りたい。でも戦争モノにしちゃうと人死にとかを描かざるを得ないし、それだとそういった方面からの非難とかがある可能性すらある…だったらスポーツにしちゃおうよ、というのが発端なのだろうが、コレが徹底されていたからこその王道的展開なのだろう。本エピソードでは敵前逃亡をしでかした一年生チームの試合後の反省と謝罪、そしてその後の成長や、サンダース戦でのケイの行動や言動。戦線離脱する仲間の無線に先ず怪我人の有無を確認するみほ…このスポーツマンシップ的な戦車道の精神というものは、確かに作中で各キャラクターの中で生きたモノとして描かれ、結果、試合の連続で描写不足になりがちな所に「王道」という形で説得力を持たせられたのではないだろうか。

徹底と言えば、本作には昨今の作品にありがちな安易なエロの排除…というものもある。DVDやブルーレイの特典OVAはともかく、本編においては入浴シーンはあるものの、ありがちなパンチラは厳禁として徹底されている。一種どちらも同じサービスシーンに見えるが、その中身は違っている。それは必然性の有無、だ。もし…もし本作が昨今のありがちな作品の様に、無駄にパンチラを連発していたら…

本作は御当地アニメの理想形、といえる程大洗町の協力を受けている。ラッピングバスやスタンプラリーといったありがちなものから、役所がアニメキャラの住民票を発行したり、商店街の各店舗に登場キャラクターの等身大パネルを置いてファンにみつけてもらう「かくれんぼ」、ホテルではそこでバイトしている、という設定でキャラクターと名刺交換が出来たり、みほが元々熊本出身という設定から熊本のゆるキャラ・くまもんをイベントで呼んでみたり、最終回後は駅に「全国大会優勝 大洗女子」の横断幕や、優勝記念セール…と、これだけノリノリで大規模なタイアップは今後もそうそう見られないだろう。この動きは関連グッズやその他諸々の販売だけではなく、作品自体を理解してくれている様にも思える。

そこで…だ。コレはアニメそのものの出来とは関係ないと言えば無いのだが、「ガールズ&パンツァー」がパンチラまみれだったら…ココまでノリノリの御当地タイアップを大洗の人達がやってくれただろうか?という点だ。こういったパンチラとかの必然性のないエロ描写…昔からあるものではあるのだが、その実アニメ等に興味が薄い人が真っ先に引く要素でもあろう。私とて、おらが町を舞台にしたアニメが放送されました!!でもそれは毎週パンツだらけでした…というのでは、嬉しいどころかむしろ引く。ツイッターとかの監督の弁によると、このパンチラ禁止には抵抗勢力がいたらしい。しかし結果論としてではなく、コレは御当地アニメとして展開するにおいて実に正しい配慮と言えるかと。

さて、最後にキャラクターについてだが、戦車という乗り物は3〜6人という結構な人数で動かすものなので、それがチーム戦ともなれば嫌でも登場人物が増えてしまう。コレは恐らくスタッフも危惧していた部分であろうし、主役であるあんこうチームや物語に強く絡む生徒会の面々はともかく、最初から大洗女子のメンバーを全員把握する…というのはかなり厳しい。ウチの掲示板でも指摘しておられる方がいたが、これを本作ではチーム毎で色分けする…というやり方でカバー…とまではいかないが、フォローしている。個人個人の名前と顔、性格が一致しなくても、チーム毎のキャラクター付けにより大雑把には判別できる様に設定されている。例えばカバさんチームこと歴女の4人はイロモノ、アヒルさんことバレー部は熱血根性、ウサギさんチームの一年生はおバカ…といった具合に、チームカラーでそれぞれ"らしい"言動をさせている。そしてそれに甘えずチーム毎での各キャラクターのポジションや性格といったものもフォローしているので、回を重ねる毎に、視聴者の方も"あの娘は""彼女が"といった具合にキャラクター個々を把握できる様になっていく。コレも技あり、だろう。キャラクターの多さに甘える事も埋もれる事もなく、愛着を持って各キャラクターを動かしているのが好印象なのだ。脇役なのに妙にヒロイン的な容姿だったり、妙にグラマーだったり、声や台詞廻しに特徴があったり、あからさまにそっぽ向いていたり…とちゃんと個性分けしているのも数多いキャラクターを把握するのに一役買っているし、結果論ではあるかキャラクター面でもおさらいが出来た5.5話の総集編もキャラクター描写のフォローになっており、遅延の是非を置いておけばコレに助けられた人も多いんじゃなかろうか。

そして勿論主役たるあんこうチームの面々はより深く掘り下げが行われているので、感情移入がより容易となっている。限られた枠ながらも彼女らの友情や育まれる信頼関係と言うのはキッチリ描かれており、相互成長していく様が分かり易く描かれている。この辺の描写も本作が「王道」と評される理由の一端であろう。物語の鍵を握るキャラクターとしてあんこうチーム以外で会長や桃ちゃんの使い方も非常に上手い。9話の活躍で会長は大物っぷりに説得力が出たのもそうだが何と言っても桃ちゃんだろう。最初はムカついてたのに最後は彼女にもらい泣きしてしまった人も多いんじゃなかろうか。彼女ほど物語を通して印象がガラリと変わっていくキャラはそうそういないだろう。

さて、各キャラクターに関しての描写もそうだが、負けたら廃校、といった件に関する伏線の張り方など、本作は「王道」という部分を差し置いても非常に分かり易い…悪く言えばシンプルで単純な構図をとっている。コレは1クールという限られた枠で必要以上に複雑にしてそれに時間を割かれない為なのだろうが、そのおかげで物語のテンポが実にスピーディーで、一気に見ても飽きない作りになったのも評価にプラスとなっている。そういう意味で言えば、本作は綿密に計算され尽くした作品…というのではなく、徹底的に手を抜かなかった作品なのだと思う。結果論的に高評価に繋がった部分と言うのは少なからず感じるし、何より「どうすればカッコ良いか」「どうすれば面白いか」を考えつくし、その全てを惜しむことなく出し切った作品なのだと思う。だからこそ、ファンは三ヶ月待ったしそれにスタッフも答えたのではないか、と。

二期とか劇場版…という声もファンから囁かれている本作ですが、私はキレイに終わったんだからやんなくてもいいんじゃないかと思ってしまう。
ただ、コレだけの作品だからして、二期を期待してしまう人の気持ちも…分からなくはないな、うん。

…あ、今回の記事、殆どエピソードそのものに触れてないな。(苦笑)


オタク視点的ポイント

1.いきなり私見だが、主役であるあんこうチームの戦車が4号D型、というのは戦車としての信頼性や能力のバランスも然ることながら、一番の理由はハッチの数…というか配置にあるんじゃないかと思う。砲塔上部のキューポラから戦車長、左右から装填手と砲手、車体前面に操縦手と無線手、というハッチの配置…コレ、アニメ第1話冒頭のシーンを見れば分かる通り、絵にした時、ハッチから顔を出した各キャラクターの配置が実にバランスが良い。コレってかなり重要だと思うんだ、うん。ちなみにこの4号戦車、第二次大戦初期から終戦までドイツの主力であり続けた優秀な戦車で、史実でもアニメと同様改良を重ねて運用されている。ちなみに「漫画100選」の方で紹介している「砂漠の獅子」という作品も、「ガールズ&パンツァー」と同じく4号戦車D型を主役として描いた作品で、コチラは4号戦車の発展性を現地での換装、という形でネタにした作品。原作者死去により未完で終わったのが実に残念。

2.後のエピソードで描かれる、みほが黒森峰時代に乗っていたティーガーのターレットナンバー「217」は、私が読んだ、「ティーガー戦車隊 第502重戦車大隊オットー・カリウス回顧録」の著者であるオットー・カリウス氏が搭乗した車両と同じ。姉のまほが決勝でも乗っていた「212」はミヒャエル・ヴィットマンが搭乗していた車両と同じ。2人とも第二次大戦を代表するタンクエースで、エンディングテーマ「ENTER ENTER MISSION」のCDに収録されている「それゆけ!乙女の戦車道」でもみほは♪カリウスヴィットマン無理だけど〜と名前が挙げられていたりする。

3.アヒルさん(バレー部)チームの砲手・佐々木あけびの声優・中村桜さんはAFVのプラモデルを趣味で作っている人で、「転輪を成形するのが好き」なんだとか。(笑)モデルグラフィックスの企画で自身の演じたキャラクターが乗り込む八九式を2日で組み上げてその見事な腕前を披露してます。プラウダ戦でソ連民謡の「カチューシャ」やアドリブで子守唄をロシア語で歌ったり…と大活躍したソ連、ロシアフリークとして知られるノンナ役の上坂すみれさんと同様、役得なキャストと言えるかも。ちなみに中村さん、トイガンやサバゲーも好きなんだそうで。ちなみに秋山殿の中の人も本作出演がきっかけで戦車プラモに挑戦、見事なデコ4号戦車作ってます。女性声優モデラーといえば「ダンクーガノヴァ」の葵役の池澤春菜さんも有名。

4.今回のラストで描かれる、フェイントをまぜつつチャーチルの側面に回り込んでゼロ距離で撃ち抜く…という技、今回は作戦を読んだダージリンさんが砲塔を旋回させた為に失敗してしまったが、コレは最終回への伏線だったりする。そういえば、みほ率いる大洗女子に勝ったのって何気にダージリンさんだけだったりする。でもこのエピソードではカッコイイライバルキャラ!!という感じだったのに、番組中盤以降はすっかりネタキャラ扱いに。(笑)
ちなみに今回のこのシーン、各キャラクターの中の人も「カッコ良い」と大絶賛しており、本当にカッコ良い描写や演出は、それに然程興味を持っていない人すら引きつける…という好例かも。

5.恐らく、本作で一番人気の秋山殿だが、何と今度発売される「よくわかる!陸上自衛隊」という防衛省制作協力のDVDに出張参戦するんだとか。戦後アメリカから貸与されたシャーマンやチャフィー、ウォーカーブルドッグといった戦車や、国産の61式、74式、90式、10式を紹介していくという内容で、秋山殿が60分喋りっぱなしなんだとか。コレ、コンビニの雑誌コーナーとかに置いてある奴のシリーズで、スタッフに「ガールズ&パンツァー」のスタッフが多数参加していた事から実現したコラボなんだとか。防衛省協力の映像媒体でこういう遊びが許されちゃうってのが、実に日本らしくっていいなぁ…と。制作はリバプールという、山田が風になりそうな名前の会社で、ローソンやサークルKサンクスといったコンビニで販売されるそうで。

6.あんこうチームの通信手にしてムードメーカーの武部沙織…通称さおりんの代表的な台詞的にネット上で使われている「やだもー」だが、実は劇中で一度も使っていない。にも関わらず、彼女の「やだも―」は容易に音声付で脳内再生可能…という実に不思議な台詞。一応ノベライズ版の二巻では使っていたりする。沢山の女の子が登場する本作ですが、実は個人的イチオシなのが彼女だったり。ちなみに中の人も美人です。

7.個人的な意見なのだが、無理に週一で粗製乱造するならば、同じ枠を二作品で使って隔週で作った方が良い作品が出来ちゃうんじゃないか?と思うのだ。「ガールズ&パンツァー」は素晴らしい作品だと思うが、13回の放送で2回落とした事実は事実な訳で。この作品に関して言えば、ファンは3ヶ月間モチベーションを保ったまま待つ事が出来た訳なのだから、粗製乱造で毎週しょーもない出来の作品を見せられるより、多少続きが気になって悶々とする期間が長くなってもちゃんとした作品が見たい…という人は多いと思うんだが。

8.4号以外に生き残った3突の装填手、カエサル役の仙台エリさんはアニメ「メダロット」でアリカの声を当てていた人で、エンディングテーマ「やっぱり君が好き!」を歌っている。八九式の車長兼装填手のキャプテンこと磯部典子役の菊地美香さんは「特捜戦隊デカレンジャー」でデカピンクの変身前を演じた人

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