アニメ「カウボーイビバップ」 第18話 スピーク・ライク・ア・チャイルド
脚本:稲荷昭彦  絵コンテ:佐藤順一  演出:武井良幸  作画監督:菅野宏紀  メカ作監:後藤雅巳


「カウボーイビバップ」という作品は、特有の大人のムードといったものを上手く作品に取り入れたスタイリッシュな作風が人気を呼び、「大人のエンターティメント」として今尚根強く支持されている作品だ。
かなり近い時期にサンライズは「星方武侠アウトロースター」という作品を送り出しているのだが、この両作品にはテラフォーミング、風水、華僑、マフィア等、共通するキーワードが結構ある。もっとも「ビバップ」がハードボイルド的なものに比重を置いたのに対し、「アウトロースター」は約束の地たる「龍脈」を探すSF冒険モノであった。同じ股旅モノでも、ビバップ号の連中には目的なぞ無く、ただ放浪しているだけなのだ。
しかしこの2作の登場により、冒険モノのSFの復権があるかと期待した向きもあった様だが、この2作品はそれなりに人気を得るものの映画や小説といった他のメディアの同名作品を除いた「SF冒険モノ」という形では単発的に終ってしまっている。

エピソード解説
めぼしい賞金首の情報が入らないビバップ号は今日もヒマだ。ジェットは洗濯、スパイクは気の無い素振りで釣り糸を垂らし、フェイは競馬場で馬券を握り締め一喜一憂…。
そんな中、ビバップ号にフェイ宛ての小包が届く。差出人不明、しかも着払いで。しかし競馬場から帰ったフェイは、その小包の存在を知るや否や、再びポッドで飛び出して行ってしまう。仕方なく謎の小包を調べるジェット達…その小包の中には一本のビデオテープが入っていた。


え〜、ファンの人には怒られてしまうかも知れないが、私は主人公であるスパイク絡みの一件…要するに、ヴィシャスやジュリア、レッドドラゴンに関わるエピソードに正直あまり面白味を感じられなかった。むしろ、単発のエピソードの方がそれぞれ様々な小ネタやら、お遊びが盛り込まれていて印象的に感じていたのだ。その単発エピソードの中でもベストだったのがコレ。まぁ、「ビバップ」全エビソード中最もキレたキャラクターのアンディが登場するエピソードも大好きなのだが、やっぱり総合力で言えばこの回。

最も、この「スピーク・ライク・ア・チャイルド」は第15話「マイ・ファニー・バレンタイン」に続く、いわゆるフェイの失われた過去を扱うエピソードの第2弾なので、純粋な単品ではない。しかし、このエピソードの特徴は、フェイ絡みのエピソードなのに、フェイ本人はギャンブルに興じてばかりで殆ど活躍していないというのがミソなのだ。描かれるのは謎の「ベータビデオ」に翻弄されるオヤシとニィチャンなのだ。だからこそ、「過去の自分からのビデオレター」というウェットなお涙頂戴ネタにも関わらず、非常にカラッとした明るい作りとなったのだろう。

そしてこのエピソードの特徴として、各々の「らしさ」がにじみ出ているという点にある。例えば、文句を言いつつも世話好きなジェットが家事(洗濯)に勤しんでいたり、故障したビデオデッキを蹴っ飛ばして直そうとする大雑把なスパイク、そしてギャンブルという刹那的な快楽に溺れるフェイ…そしてそんな中、とことんマイペースなエド。
更に、元刑事だからなのか謎のビデオの中身をなんとしてでも確かめられずにはいられないジェットと、半ば呆れつつも面白そうなので付き合ってしまうスパイク、そんな2人(+エドとアイン)においてけぼりを食らってホントは寂しいクセに強がるフェイ…そして相変わらずとことんマイペースなエド。

この「カウボーイビバップ」という作品、サンライズ作品にしては結構世界観に関する設定を視聴者側に放り投げているフシがあるように感じる。「ガンダム」の様に、世界がキャラクターを動かしていくのではなく、その空想世界で生きるキャラクター達が物語を動かし、つむぎ出していく…だからややっこしい説明なんか無用だし、ヘンテコなネタやらお遊びキャラクターをも物語に溶け込ませる事が出来たのだろう。だからこそ、ウワベだけのカッコツケにはならず、ファンが言う所の「大人のエンターティメント」として成立したのだろう。

ただし、コレは余談になってしまうのだが「大人の…」という言い回しには個人的に「ガンダムセンチネル」辺りを支持しているガンダムファンが良く云う「設定がリアル」という言葉と同じぐらい引っ掛かる。作品側から視聴者を限定してしまうような売り方はもちろん、それを支持するファンまで「ガキは見るな」的な発言をしたってそれは作品の幅を狭めるだけだ。よく「あの作品はジャリメーションと判断したので…」なんて語る人もいるが、別に子供向けの作品だって大人が楽しめないとは限らない。それ以前にこんなもの、アニメを見続けたい大人が「でもボクちゃんは大人なの」と言い訳をしているに過ぎないんじゃなかろうか。

この「ビバップ」にしたって、大人のアニメと言われつつそれを支えていたのはやっぱり中高生が中心…むしろコレは「若い世代が憧れるカッコイイ大人の世界を物語に取り込んだ」というべきだろう。少なくとも私は「中間管理職世代に『カウボーイビバップ』が大人気」なんて聞いた事が無い。「ビバップ」は「大人のアニメ」ではなく「大人びたアニメ」なんじゃないだろうか。

ま、余談はさておきこの「カウボーイビバップ」では全編で言える事なのだが、特にこの「スピーク・ライク・ア・チャイルド」はキャラクターの役割分担、そして「らしさ」を上手く作品に封じ込めた好例だと私は思う。

最後に、この「ビバップ」は雰囲気的な部分から「ルパンV世」と比較されがちなのだが、実はキャラクターのポジション的なものもかなり近い印象がある。そうなるとスパイク、ジェット、フェイの役割はおのずと決まって来るのだが、唯一浮きそうなのがエド…しかし、エドも考え様によっては結構「五右衛門」しているのだ。例えば五右衛門の斬鉄剣に代わる物がエドのハッキング能力と考えられるし、時代錯誤で西洋文化を毛嫌いしているような印象(パンをマズイといってインスタントの蕎麦をわざわざ買いにいったり)まである五右衛門も、エドと同じ変人の部類であり、なによりそこが魅力というのも共通しているじゃないか!!(笑)

…でも、とっつぁんはヴィシャスではないだろう。そもそも「ビバップ」は「ルパン」と違って追われる立場ではなく追う側なのだし、むしろヴィシャスはマモーといった劇場版の敵役になるのでは?

オタク的視点によるポイント
1.スパイクとジェットが訪れた映像マニアの店員は、千葉繁氏が声を当てている。
「うる星やつら」のメガネ、「パトレイバー」のシゲさん、「イッパツマン」の今井一郎…この手のウンチク系キャラクターを演じさせたら千葉氏の右に出る者はいないんじゃないだろうか?彼がベータとVHSについてのウンチクを語るシーンはファン必見と言えるだろう。

2.ジェット達が訪れた時彼が見ていたドラマは「ビバリーヒルズ高校白書」がモトネタ。
他にもまんまひっくり返した日本列島の地図がでたり、電気博物館に現代風なエアコンやら扇風機が見られる。ベータやらVHSもそうだが、メタフィクションとは違う形で空想世界と現実の繋がりを印象的に見せている。

3.フェイ役が林原めぐみなのは有名だが、今回のエピソードでは若かりし頃のフェイ…つまり林原演じる少女キャラクターが見られるという事なのでファンなら必見…なのか?いや、私は別にファンじゃないんだが。
それはともかく、普段のフェイの印象からかけ離れた少女期の彼女は、そのギャップがやたら印象的。「フレーッ、フレーッ、わ〜た〜しっ!!」ですからなぁ…。
あ、ちなみにココのビデオの中で、少女期のフェイの友達の声を当てているのは「ラブひな」やら「フルーツバスケット」で人気が出る前の堀江由衣。アイドル声優マニアの方、チェックして見たら如何?

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