100選クローズアップ編 その2 2010/09〜2010/12



2010/12/17 「高杉さん家のおべんとう」柳原望 二巻 (553)

さて、今回は大分前から「書こう!」ではなく「書きたい!」と思っていた作品のご紹介。「高杉さん家のおべんとう」です。

この作品、結構複雑な設定なので「100選」での説明をもう少し噛み砕いた解説がいるかと思いますので、先ずは「100選」よりもうちょっと詳細な説明をば。

博士号は取得したものの、職にはあぶれて将来への見通しが立たぬまま三十路になってしまった大学研究生・高杉温巳…彼には幼少の頃から共に育った姉の様な存在の叔母・美弥がいた。
しかし温巳が高校三年の時、帰宅が遅くなった美弥を迎えに行った両親が事故死。美弥はその責任を感じ失踪してしまう。
そんな美弥が急逝した事を聞かされた温巳は、彼女の指名により12歳になる彼女の娘・久留里の「未成年後見人」になる事に。温巳に対し、中々心を開かない彼女とのコミュニケーションをとるキッカケは、彼女が作ったきんぴらごぼうだけのお弁当だった。

とまぁ、こんな話です。

突然…しかも非常に難しい年頃の女の子の保護者になってしまった、というのは、丁度私自身が温巳とほぼ同い年…という事もあり、非常に…何と言いますか、身につまされる部分があるのですね。まぁ、世間的には私自身も久留里と同じ、なんし少し下の歳の子供がいてもおかしくない年齢ですし、会社こそ転々としていますが温巳とは違い職にあぶれてこそいませんが、独り身、将来への展望、未来への見通し何も無し…。

まぁ、私の場合は私に好き好んで娘、ないし息子を託したい、なんて思う奇特な親族はいないのですが、とりあえず「なんだか他人事とは思えない部分」というのがこの作品には強いのですよ、ええ。

ちなみに温巳にとって叔母の美弥は姉弟の様な関係であり、実は初恋の相手でもある存在。しかし、上で書いたように温巳が高3のある日、終電に乗りそびれた美弥を迎えに行った両親が事故死…それに責任を感じ、美弥自身も温巳の前から姿を消した、という経緯が根底にあったりするのです。つまり、家族というもの自体が、温巳にとって、それがどんなものだったのかすら忘れてしまっていた存在…でもある訳で。

そんな彼に、突如かつて自分の前から姿を消した叔母の娘…それもかなりの美少女の保護者になってしまう温巳にとって、これは家族というモノの再確認の物語でもある訳ですね。

…まぁ、本作の紹介記事なんかですと、「突然美少女の保護者に」という部分ばかり強くクローズアップされてしまい易い気もしますが。(苦笑)

ともあれ、そんな彼だからこそ突如現れた「保護しなくてはならない存在」である久留里に対し、どう向き合っていいのか分からない…この部分、心情というのも、独り身三十路男にとってはどうしようもなく共感してしまう部分かと思うのですね。

三十路になっても独り身の男…というのは、いよいよもって両親親族近所知人その他諸々から、「早く身を固めろ」という視線で見られる時期です。私など、二、三度見合いの勧めまでされてしまっています。(いや、断ってますが/苦笑)

そうなってくるとですね、自身の人間的、性格的欠陥やら、その他諸々のネガティブな部分に気が付いてくるケースも増えてくる訳でね、只でさえ見通しの悪い自身の近い将来、今後にね、漠然と不安を感じてしまうお年頃でもあるのです。

そんな中、突如現れた"保護すべき家族"に対し、どう扱っていいのか、どうコミュニケーションをとればよいのか分からず、それでいて周囲から否応なしの視線、言動により責任感だけは重く圧し掛かる状態で、ひたすら空回りしつつ、それでも一歩一歩…得体の知れぬ未確認生物ともいえる難しい年頃の女の子と心を通わせていく温巳の姿に…何と言うか、たくましさ…強さの様なものまで感じてしまうのですね。単行本の後書きにて温巳に対し「残念な奴」という評がなされていましたが、とんでもない!!この状況、私なら、まともに久留里と向き合う事も出来ず、三日でギブアップしてしまうかも知れません。

そして本作はそんな独り身三十路男への共感にのみならず、割とリアリティーのある子供の事情、心情が描かれているのもポイントかと。特に、久留里の友人となったなつ希や、久留里に好意を持っている美少年の光…この二人、子供でありながら、温巳と久留里の関係を見守る、かたやちょっかいを出す…という構図が、非常に面白いのですね。この辺の描写、「子供の為に」の名目で子供おいてけぼりな不毛な議論を繰り返す連中に読ませてやりたい部分です。「子供の事を思って」といって子供の気持ちを子供扱いする大人に、子供からの共感は得られんのじゃないか、とね。

また、今後何がしかの形で描かれるであろう(というか、描いて欲しい)失踪した後の美弥と、久留里が生まれた経緯等、今後への見どころは多く、目が離せない作品なのですよ。

そんな訳でね、この「高杉さん家のおべんとう」という作品、マイナー誌連載で知名度もある訳じゃない作品なのですが、独り身三十路男を中心に、強く強くおススメしたい漫画なのです。

…何と言ってもね、一巻巻末のオマケ漫画に描かれている、温巳の同僚の特別研究員・小坂さんが可愛いんだ、コレが。(結局それか!!って?/笑)


2010/12/09 「フィンランド・サガ(性)」 第二巻 (519)

どうすれば長くサウナに入っていられるか、分かるかい…?
数を数えるんだ…ひとつ、ふたつ、みっつと…
丁寧に注意深く…よっつ、いつつ、むっつと…
今まで手に入れられなかったものの数を…


プロサウナチャンピオンこと本庄が織り成す、サウナワールドの第二巻…急転直下の展開になってます。バトルモノになっちゃったらスゲェよな、なんて一巻読んだ時に思ってたら、ホントにバトルやっちゃってるよ!!(笑)

まさかの展開ですよ、ええ。まぁ、バトルって言ってもやってる事はあんまし変わらないんですが、この漫画は凄いですよ、凄さに磨きがかかってます。どう凄いのかというと

この漫画に面白みを見出せない人は徹底して見出せないであろう

という点。この点で一巻より突出してます。ナイフみたいにとんがってます。恐らく、この漫画を読んだ人の中で5割…いやそれ以上の人がこの作品に対し

「意味不明」
「面白くない」
「訳わかんない」

と評するでしょう。そして、再びこの作品をのページをめくる事はないのかも知れません。でも、一見訳のわからない本庄の…場末のスナックで酔っ払いがママに語り続ける自身のノスタルジィの様な語りに、何がしか感じるものがあった人間にとっては…もう…目が離せないモノになるんですね、ええ。いや、困った事に何処がそんなに良いのか?と聞かれると困ってしまうのですが、

大きな声で語られる自信は ほとんどがレンタル品
自分のものじゃない
本当に自分で考えたことは とてもじゃないてど大きな声では言えない


特にこの言葉は身につまされるのです。そう、時にプロサウナチャンピオンの言葉には、シュールな笑いとかそういうのではなく…何と言いますか、人としての、生きることへの「本質」みたいな物が…ふと見えたりする事があるのですね、うん。黒い雨雲の切れ間から一瞬だけ陽が差すかの様に。

この第二巻ではそんな読者の気持ちを、本庄のサウナバトルに立ち会った大学生・入江田君が代弁してくれています。ある意味、入江田君が今回の主人公なのですね。

大学に戻る事を告げた入江田君に、本庄はこんな言葉を送ります。

君の神話を生きろ…人生 今はじまったばかり
そんな気がする夜をつむいで

…俺も明日、ガンバろ。


2010/12/07
「琴浦さん」 第二巻 (559)


さて、今回は二作品と我ながら頑張ってます。
いや、書きたい作品はいっぱいあるんです。何を書こうか中身が整理つかないだけで。(笑)

今回紹介の「琴浦さん」ですが、あんまり馴染みがない人も多い作品かと思いますが、この作品、元々は所謂Webコミックという奴でして、単行本のリリース以降、結構ネット上を中心にプッシュされ始めた作品です。何と単行本1巻は一か月そこそこで3版まで刷られたんだとか。

基本は本編の紹介文にも書いてます通り、人の心が無意識に聞こえてしまう少女・琴浦さんと、彼女に惹かれた少年・真鍋の学園生活を描いた作品で、「基本ラインは」アニメ化して一時期騒がれた「らきすた」とか「けいおん」なんかと同じような、ゆる〜い日常を描いた作品です。

はい、ここで重要なのが、わざわざカギカッコ使ってる様にその路線が「基本ラインは」である点。単行本の表紙なんか見てますと、そのイメージが増幅されてさぞかしほのぼのとした可愛らしい作品なんだろうなぁ〜と思えてしまうのですが、実はコレ、罠なのですよ。いや、実際琴浦さんは可愛いんですが。(笑)

この作品、明らかに他のゆる系4コマとは一線を画しています。その理由は、パッと見の可愛らしさとは裏腹な、ストレートかつヘビーな描写、展開です。

先ず、主要キャラクター…主に女性陣は重いトラウマや事情を抱えています。(以下ネタバレ)

他人の心が聞こえてしまう琴浦さんは、実際に口にしている言葉と心の中で考えている事の区別がつかず、彼女が原因で両親は離婚。親戚やクラスメイトも彼女の能力を気味悪がり孤立。本人も本人で自分のせいで他人を傷つけるのを恐れてわざと他人にキツイ言動をとって距離を置いてしまう。

彼女の理解者であるESP研究部部長・御舟百合子は幼少期に千里眼を持つとして世間を騒がせた母親が自殺しており、世間や親族から母親の能力を否定され詐欺師扱いされた事に強いトラウマを持っている。ESP研を立ち上げたり琴浦さんに近づいたのも、全ては超能力の存在を証明して母親の不名誉を晴らす為。

琴浦さんの良き友人となった森谷ヒヨリは、新興宗教の教祖を両親に持つ為、真鍋に好意を寄せていたが本人からは敬遠されており、そこへ転校してきた琴浦に真鍋が好意を寄せる様になると嫉妬から琴浦さんに対し陰湿ないじめを繰り返し、挙句の果てに実家の信者に命令し、真鍋を襲わせたりもする。

…とまぁ、こんな感じなんですが…ヘビーでしょ?

でも、作品、コメディーとして決して暗い作風にはなっていませんし、決して「鬱展開」な作品ではないのです。この程度で「鬱展開」なんて言えてしまう人は、よっぽど様々な面で恵まれた、満ち足りた生活を送っている人なのでしょう。こんなんで「鬱展開」とか言ってたら、ジョージ秋山先生の「アシュラ」とか絶対読めないぞ!!(笑)

鬱とも取られかねない状況や展開なのに、それでも明るく見せているのはキャラクター達の力強さでしょう。様々な事件、キッカケを媒体として、きっちりと成長していく様が描かれているのですね。

トラブルに巻き込まれる事を嫌い、事なかれ主義だった筈の真鍋は琴浦さんと出会い、積極的にトラブルに介入する正義感みたいなものまで芽生え、特に琴浦さんの為なら自身を省みない程の心の強さを見せる様になります。

下心ありきで琴浦さんに近づいた筈の部長も、彼女の人となりを知るにつれ、そして真鍋の存在もあり、真鍋と琴浦さんにとって最大の理解者、協力者になります。2人の恋に関してはやや面白がってますが。(笑)

そして、嫉妬心から琴浦さんに陰湿ないじめをし、真鍋を襲わせたりもした森谷さんも、真鍋入院&琴浦さん失踪の際に罪悪感を覚え、自身の心情と反省の念を吐露した事により、一応恋のライバル?ながら琴浦さんと強い友情を築くにいたります。

ただ、彼女達の関係もただ強いだけではありません。相応の弱さ、あやうさも持ち合わせています。事情、都合、過去…それぞれ色々あって、それでも一緒にいる彼女らの関係…その強さ、前向きさ…その一方で垣間見せる、弱さ、あやうさ、不器用さ…このバランス感覚が秀逸なのですね。強弱大小あれど、リアリティーのある人間関係ですよ。

さて、琴浦さんと仲間達の今後、どうなっていくのか楽しみな作品です。
漫画好き、漫画読みを自称するなら、是非読んでみて欲しい作品です。


2010/12/7
「鉄のラインバレル」 第16巻 (293)


「スパロボL」にアニメ版「ラインバレル」が参戦していて、そういえば最新刊買ってまだ読んでなかったっけ?と思い出し、16巻を読んでみたらサッパリ分からない…コミックスの発刊ペースが早くはない作品で、かつ物語の進行速度も遅いので、新しい巻が出ると混乱してしまう作品だなぁ…と再認識してしまいました。

私はアニメ版未視聴なので、「スパロボL」をやった限りではそこそこアニメ版も良いのかな?と思って色々ネットでの評価なんかを覗いてみましたが、割と原作レイプ的な言われ方をしてしまっている作品の様でビックリ。何と言うか、エロアニメ呼ばわりされているケースもありました。ま、その辺は見た人の意見に任せます。重ね重ね言いますが、私は見てないので。

で、そんな感想とかを見て回っていたら、何だか昨今のロボットアニメとかロボット漫画では毎度の如く言われる評がね、あった訳です。それは「エヴァの二番煎じ」的な意見。

いやいやいや…違うでしょ、と。確かに石神社長のポジションは明るいゲンドウ的な印象はありますし、主人公御一行が中学生(現在進学して高校生ですが)で、その辺の心理的描写が対象的ではあるものの描かれたり、と「エヴァ後」の作品である事は時系列からも作風からも見てとれる部分はあります。まぁ、「エヴァ」は直球に見せかけた変化球(私にとってはボークですが/笑)に対し、「ラインバレル」は変化球に見せかけたド真ん中の直球、ですが。

ただね、「エヴァ」と「ラインバレル」では決定的に違う要素がある訳です。それは「敵」の有無。

「エヴァ」の場合、主人公が敵と戦う理由がセントラルドグマのアダムに使徒が接触したらサードインパクトが云々…という理由づけはなされていますが、その描かれ方はどうでしょう?敢えてなのかはさておき、敵の思想、目的…といった「形」がぼかされているのに対し、「ラインバレル」には明確な「思想、目的を持つ敵」が存在する訳ですよ。

しかも面白い事に、敵…つまりは加藤機関の目的は根本的には主人公サイドであるJUDAと同じなのです。久嵩と石神、違うのはその過程、方法論。そんな中、最初は力に溺れた主人公・浩一も成長を見せ、「正義の味方」という青臭いながらも力強い「どうしたいか」を持つに至る訳です。

思えば浩一にしろシンジ君にしろ、自身の乗るメカを否定し、搭乗を拒否するエピソードがありますね。しかもそのキッカケも自身がそのメカに乗っている時に自らの意思とは無関係に、強制的に殺人を犯してしまった、というかなり似た状況。その状況を経て、シンジ君はエヴァどころか全てを放棄し、逃げたのに対し、浩一はラインバレルは否定したものの戦う事からは逃げなかった…この違いは大きいのです。

「エヴァ」が流行った時代はシンジ君の行動で良かったのかもしれませんが、「ラインバレル」の場合はそれに至るまでの経緯が描かれいるのも両作品の大きな違いでしょう。まぁ、ココまで書いておいてなんですが、ホントはナンセンスなんですけどね、こういう比較論は。

…で、結局お前は何が言いたいんだ!!となる訳ですが、その浩一の人間的な成長っぷりと同時に若さが強く打ち出されているのが、今回の16巻かな、とね、思う訳です。

…青臭い事を言わないガキなんて、面白くないよね。

ともあれ、これ以上書くと無事完結した時に「大惨事」で何にも書けなくなりそうなので今回はこの辺で。



2010/11/24 「森田さんは無口」 アニメ化記念として(400)

http://comic-candy.com/index.php?option=com_content&view=article&id=423:2010-11-09-13-21-25&catid=5:2010-02-25-06-56-38&Itemid=4

以前

「らきすた」「けいおん」に続くのはコレかも?

と紹介した「森田さんは無口」がOVA化され、第三巻の特装版に封入されるんだそうで。その他にも別口でDVDも発売…と、にわかに盛り上がっている様です。

予想的中って考えちゃって良いんですかね?
コレで「らきすた」「けいおん」程ではないにしろそこそこ人気出ちゃったりしたら…クックックッ…以前、昨今ちっともアニメとかを見ず、その手の話題もスル―気味だった私に業を煮やしたのか、

「アンタは最近の作品見るに見合うセンスが無い、古い」

なんて言いやがった奴もギャフンと言わざるをえまいて。(私は「竹を割った様な」ならぬ「餅をついた様な」性格なのです/笑)

…いや、まぁそんな大げさに人気が出るとは思わないんですけどね。むしろ、同じく佐野先生の「Smileすいーつ」の方をやった方がラブコメ要素もあって面白いと思う位ですが、「けいおん」的な中身スッカラカンでも大ヒット…となってしまう昨今、「森田さんは無口」だって「フツーの日常を描く」という点での潜在力は侮れません。

アニメ化の成功のカギは、「極端に無口」という主人公の特性をどう生かすか、ではなく、むしろ各キャラクターの表情の豊かさをどれだけ強調出来るか、だと思います。特に森田さんはその特性上、声ではなく表情で感情を表現しないと只のアヤナミ系キャラになってしまいますからね。そういうのは彼女の魅力ではない訳で。

まぁ、個人的にはこのアニメ化は複雑な気分…。いやね、この辺の感覚、漫画読みなら分かってもらえる心境だと思うのですが、然程有名でもないんだけど、密かに気に入っていた作品がアニメ化しちゃうとさぁ…自分の好きな作品が有名になって嬉しい気持ちがある半面、悪い言い方をしてしまうと「にわか」とか「消費型」のオタク供に食いつくされ、蹂躙されまくった挙句に流行りが終わった途端捨てられ、作品にまで悪影響が出てしまう…なんてのをね、心配してしまうと言いますか…例えるなら

「地味なんだけど実は磨けば光る娘かも」なんて密かに好意を持っていた事務の女の子が、急に髪を染めたりブランド品とか持ったりと派手になってしまい、どうしたんだろうと思っていたら陰で妻子持ちの男と悪い関係を持ってしまい、それが相手の奥さんにばれて昼メロも真っ青な展開になり、遂に会社にもいられなくなって結局退社しちゃった

なんて感じですか。いや、分かり難いと思いますが。(苦笑)

ともあれ、この作者の佐野妙さんは今一番脂がのっている4コマ作家さんの一人かと思いますので、今後の動向に期待、ですかね。

…つーか、何気にこの作家さんに思い入れあんのな、私。(笑)



2010/10/27 「とろける鉄工所」 第五巻 (405)

さて、とある地方(広島っぽい)のはずれにある鉄工所「のろ鉄工」にて汗水流し懸命に働く溶接工の生き様を描いた「とろける鉄工所」もいよいよ五巻が発売されました。

この作品、いわゆる「職業漫画」であるのですが、確かに溶接もそうですが、工場でのオートメーション的なモノではなく、割とハンドメイドな部分が残っている業界…町工場とか、建設、土木関係もそうですが、こういうモノって身近な割に案外中身って知られてなくって、その点この漫画にて丁寧に解説されるギョーカイのウンチクって、こういう業界に縁が無い人にとっては新鮮なんだろうなぁ…と思う訳です。

…まぁ、オヤジが大工なせいで、中学の頃から生コン練らされたり、玄翁やノコはおろか、エアー釘打ち機とかまで使わされて、自分自身も重機や溶接ととても縁が深い現場仕事をしている身にとっては、新鮮さは正直無いんですが、その分「あるある」的な面白さがあるのです。

そんな「あるある」的な見地で、今回最も注目すべきポイントはココですかね。自分でパン屋をやる為にのろ鉄工を退社する事になった今井さんが、新人の吉っちゃんに自分が愛用していた工具と共に送ったこの言葉でしょう。

「吉っちゃんよ、この仕事はの、プロボクサーみたぁに選ばれた人間だけじゃのうて、入社した日から誰でもプロなんよ。
じゃけぇ技術がついていかんでもの、プロ意識だけは持っとかんといけんで。
吉っちゃんはもう人に与える立場なんじゃけえ。」

この言葉…深いですよね。今後、就職していくであろう学生に、是非どこかの会社だったり、どこかの店だったり、どこかの工場だったりに入社した時に思い出して欲しい言葉です。

私も経験ある話ですが、「金を稼ぐ」という自覚が学生上がりとかだと持ち難いんですよね。私自身、近所のコンビニで店員2人がバカ話をしているのを見て

「ま、所詮はバイトだからな」

と思っちゃう程度にはなりましたが、こういうのも今井さん言う所の「プロ意識」という部分だよな、と。

今井さん、実は元ヤクザで刑務所に服役中に溶接を覚え、出所後にのろ鉄工にやってきた人です。私が日銭を稼いでいる建設業という所にも、今井さんの様な人…背中にもんもん入った人一杯います。そういう人の中にはそのスジを思わせるクセの強い人も多いのですが、大抵の人は「金を稼ぐ」という事に真面目…そしてシビアなのですね。

そんな人達から、私はよく若い衆に対しての「仕事の覚え方」に対して愚痴をこぼされる事もある訳です。立場上、ね。その中身は大体何時もこんな感じ。

「自分達が若い事は、失敗したら親方に殴られて、そうやって体で仕事を覚えて来た。仕事は懇切丁寧に誰かに教わるんじゃなくて、人から盗んでいくものだ。それが分かってないから今の若い衆は何時までたっても段取りを覚えないし、一人前にならない。」

まぁ、確かにそうなんだよね。仕事ってのはさ、それで金を稼いでる訳なんだから、仕事を一人前にこなせて初めて会社との契約が成立する訳でね、そうなったら他の人の動き、やり方をパクってでも仕事をこなせるようになってかなきゃダメ。誰かが懇切丁寧に教えてくれるの待ってても、誰も好き好んでは教えちゃくれないし、教えて貰ったらそれをその場である程度習得していかなきゃ何時まで経っても他力本願なんだよね。

こういう部分…心構えというか、「仕事とはどういうモノなのか」を知る、という事が、今井さんのいう「プロ意識」だと思うんですよ。

ま、エラそーに言っちゃってますが、私もまだまだなんですけどね。



2010/09/07 「コッぺリオン」 第八巻 井上智徳(443)

いやいや、 本編「100選」の紹介文にも書いている通り、前々からアニメ向きの題材だよなぁ…と思っていたら、アニメ化ですって、「コッぺリオン」。この巻の帯で知りました。アニメ化記念って事で「クローズアップ」にてちょっとばかし詳細な解説をばしましょ、というのが今回の主旨ですよ。

時は西暦2034年、お台場に建てられた原子力発電所のメルトダウンにより死の廃墟と化した東京。放射能汚染されたこの地を防護服も着けずにゆく少女達がいた。彼女らは、隔離された東京に残る生存者の救助の為に自衛隊が遺伝子操作によって作り上げた放射能に耐性を持つクローン人間…「コッぺリオン」だった。

…とまぁ、こんな感じ。
メイン主人公である荊とその仲間二人は陸自第三師団所属の通称「保険係」で、東京に残る生存者の救助が活動目的。そして主人公達「保険係」とは別の目的で行動している「掃除係」がおり、この掃除係…荊達の認識では「放射能の除去」が目的とされているものの、荊達以上に「コッぺリオン」…すなわち自分達の生い立ち、作られた目的等に関して核心に近い部分を知っている様なそぶりもあったりと。それから、荊達コッぺリオンは遺伝子操作の副産物として超能力…破格の運動能力だったり、超視力だったり…を持ってます。

さてさて、あんまりネタバレ的な事を書いてしまうとこれからアニメを見てやろう、ないし先に原作漫画で予習しちゃおう、という人には「余計な親切大きなお世話」でしょうから割愛。

大雑把に本作の魅力を説明しますと、この二点ですかね。

一点目
「はだしゲン」以来かも知れない、日本人としてはタブー、ないしアンタッチャブルな部分もある「被曝」を扱っており、そもそもが人の生死が絡む作風…でありながら、作られた存在であり半ば人間扱いされなかったりもする荊達がそれでも人々を救おうとする姿が作品のキモになっています。

二点目
ハリウッド映画もかくや、の矢継ぎ早な「ジェットコースター的」展開で、特に小津姉妹の登場からの展開は派手なアクションシーンも増え、正に「目が離せない」レベル。登場人物が皆漫画的に表情豊かなのもこのスピード感を盛り上げるのに一役買ってます。

ホント、アニメ向きの題材なので、この記事とかで興味持った人は注目してもいいんじゃないかな、とね。


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